Ed tech / AI 活用の課題 (1)

デジタル・ナレッジ(https://www.digital-knowledge.co.jp/)さんの
ご厚意に甘え、試験的にAI教材を作成中である。

http://esnenglish.world.coocan.jp/aitoppage.html

従来の学校における英語教育では実現が難しかった音声面、特に「聞く」「発話する」学習の強化に大きな可能性を感じるとともに、私自身のスキルや発想の問題が大きいと思うが
課題も多く見えてきた。

やりながらなのでまとまりもないものになりそうだが、ブログで少しずつ発信して
いきたいと思う。

また2018.9.16の「未来の先生展2018」でもワークショップを実施するので
多くの先生方や学生さん、企業の方々と一緒に、従来型の授業の進化を考えて
いきたいと思っている。多くの方に是非ご参加頂ければ幸いです。

□ 未来の先生展2018ESN英語教育総合研究会チラシ
http://es-network.org/wp/wp-content/uploads/2018/07/20180915miraisensei-1.pdf
□ 未来の先生展2018前売り券販売サイト
https://eventregist.com/e/mirai_sensei
□ 未来の先生展2018ESN英語教育総合研究会申し込みサイト
http://es-network.org/?p=10852

さて、「今回はAI活用教材の作成や活用自体が目的化してはならない」
という観点で少し書いてみたいと思う。

「Ed techによって知識・技能の習得は個別最適化されるので授業はインタラゥティヴにアクティヴにPBL(問題解決学習)にその大半の時間を割くことが出来る」

こうした趣旨の発信は経産省の提言をはじめ多くの場で行われている。この発信自体は間違っていないと思うし、歓迎すべきことだと思うが2つの点で課題を抱えていると考える。

1つ目は、

「仮に授業が知識・技能の習得の場から解放されたとして、新しい授業を教員と生徒がどのように創り上げるのか?」

という課題。これについては従来型の授業しか行ってこなかった私を含む多くの教員が、意識を変えて学ばなければならないだろうし単なる理論に対しての知識ではなく、日々の授業の中で試行錯誤していくべきものだが、また別の機会に取り上げてみたい。

2つ目は、

「Ed tech によって知識・技能の取得は本当に、個別最適化されるのか?
(されるとすれば、どのようなケースで、どの程度なのか?)」

という課題である。

私自身はICT機器の活用やオンラインの活用に関しては比較的早期の段階から取り組んできた。

① 1998年HTML型教材
解説ページ⇒問題ページ⇒間違えると解説へ の繰り返し。
「理解⇒演習⇒確認⇒理解」を繰り返し「知識定着」を狙う。
現在のAI技術を駆使すれば、個別最適化まで可能だろうが
「紙の教材なら勉強しないがPCならやる」という生徒は
Windows95発売直後の時代よりは少ないように思えるので
学習習慣の定着を狙った工夫がより必要となるのでは?

② 1999年RPG型教材
全3作。文法復習をドラクエ的世界で行うゲーム(2作)。
海外旅行で必要な英語を音声付きで学ぶゲーム(1作)。
最後の「マンハッタンスパイラル」作成には1,000時間を
超える制作時間を要した。New Yorkでの1000枚を超える写真
撮影、シナリオ作成、ネイティヴの音声収集、BGM音源収集
など。労力に見合うかどうかは分からないが、夜中まで
やって心配という声や放課後のPC教室に行列が出来るなど
当初はインパクトがあったものの短期的な効果しか得られなかった。
仮に長期に渡っての教育効果をあげるものを開発するとすれば
「ワンピース」を超えるものでなければ、と感じる。

③ E-mail添削
2001~2002、2004~2005にかけて実施。
「和訳」「英作文」「長文読解記述」など、通常の紙ベース
の添削よりも、コピペなどが出来る分楽だろうと考えて
やってみたが、週末はまさに「地獄」。
利点としては「生徒の間違いや躓き」をデジタルで保存
出来るので、その後の指導にも役立てることが出来るが
教員の労力を考えると広く行うのは無理。
AIの活用は現段階では技術的にまだ難しいのではないか?
教育効果は生徒次第であるが、それなりにあったと思う。
(Evidenceを示せるようなものは何もないが)

④ オンライン視聴覚教材の活用
授業のWarming Up として活用しているものがほとんど。
熟語を説明した動画から難しい口語表現の意味を考えさせたり、
SDGsの視点から選んだTED ed などの動画を段階的に用いて
出来るだけ多くの英語、テーマに触れさせることを目的として
活用。

⑤ 授業動画 http://esnenglish.world.coocan.jp/englishmovie.html
2016年の熊本の震災をきっかけに、被災地の子どもたちに
教育を届けたいというESN代表の久保先生の志がきっかけで始めた。
実際に現地を訪れてみて、オンライン教材では足りないものが
多すぎることを痛感。以降、勤務校生徒向けに普段の授業では
ゆっくり解説出来ない事項(入試問題全体の解説など)を中心に
作成を継続中。

⑥ AI教材 http://esnenglish.world.coocan.jp/aitoppage.html
2018年夏から制作中。まだまだ試行錯誤の段階。

振り返ってみると、少なくとも私自身のICT機器の活用では「知識・技能」の習得が個別最適化され、従来型教材よりも効果を生んだとはとても言えない。
一時的に学年全体の学力試験の結果が例年よりも偏差値にして7程度上昇したこともあったが、それが継続して学びの質を変えるところまではとても行っていない。そもそも、偏差値の変化が何に起因するものなのかなど特定も出来ないし、それ自体に意味があるとも思えない。

さて、では何が足りなかったのか?

9月の未来の先生展でもこのあたりの話は触れようと思っているが

「家庭学習」⇒「授業」⇒「評価」⇒「発展学習」

という流れの中で、私が行ってきた取り組みは全て「単独」のものに過ぎなかったという点が大きな課題であった。

これは教材のクオリティーが向上し、AIがどんなに発達しても大きな課題であり続けるように思う。

現在、世の中で言われているICT、Ed tech、AI活用学習なども同じ視点から、Critical に検証すべきものが多くあるように感じる。

□「普段の授業よりも、名人の動画見る方が役に立つ」
⇒ 残念ながら、そう言えるケースも多々あるのかもしれないが「誰が見るのか」という視点が欠けている。 「自動車教習所の教官に習うより、VRと動画でF1ドライバーから学ぶ方がよい」と言ってるのとあまり変わらないように私には聞こえる。

□ 「紙の教材だと興味が沸かない学生でも、Ipadで映像を通して学べればドンドン学ぶ。

⇒ 教育現場に身を置く教員であれば、思わず失笑してしまう方が多いと思う。
確かに好奇心の刺激において大きな威力を発揮するケースもあると思われるし効果を考えず、どんどん活用すべきだと思うが、別の問題として「身体性」が疎外されていることから、「知識・技能」を「身につける」のではなく、「触る」に近くなるのではないか、といった危惧も個人的に持っている。
元堀川高校の校長先生の荒瀬先生のご講演でも、アメリカの学者の研究から教育効果を疑問視する声もあることを知った。

□ 「問題集に付箋を貼り付けたりしてやるよりも、自動的に個別最適化される学習の方が効果的だ」
⇒ 学習者が自分の課題を能動的に意識しながら学ぶやり方よりも、自分の課題や弱点を   AIという他者に発見して貰い、演習量を増やす方が効果的・・・。果たしてそうだろうか?
先日、元プロ野球選手の落合氏が、「自分で考えること」が何よりも必要だとTVで語っていた。もちろん、エビデンスのない精神論に基づくコーチングは論外だが、エビデンスに基づく   方法論を他者が与えることだけで人は成長するのか?エビデンスに基づく方法論の追求は絶対に必要だが、「学習者中心」と言いながら「知識・技能習得」の場で、「学習者の思考」を排除することが何を生むのかを考える必要がある。

新しい技術や理論を教育の実践の場に取り入れることに前向きなつもりである。
ただ、「自分の行ってきた失敗」を振り返ると、「技術・理論」の導入や活用自体が目的化してはならないと考えている。

ちょっと外れるが、「ゆとり教育」がなぜ「失敗」だったのか?
失敗かどうかにも議論の余地があるが、それは置いておいて「コンセプト」が学びの場のサイクル(家庭・教室・評価・発展)から切り離されたところで議論され、上から押しつけられ
上手くいかないと、「現場の教員の力量不足」となったこと自体が大きな「失敗」だったと思う。

教育とは、「植木」のようなものなのかもしれない。
本来、子どもたちが持っている「育つ力」を見極めそれぞれに対して必要なことを与えていく。

トマトなんかじゃ駄目なんだ、これからは高級イチゴの時代なんだから

と、相手も「見ずに、知らずに」化学肥料のような教育を施せば何が起こるか。

私たちは慎重に考え、教育を変えていかなければならないのではないだろうか?

うーん、全くまとまりもなく、だらだらと書いてしまいました。

「知識・技能」の習得について

□ 軽視すべきではない。
□ ICT機器の利用が学習者の主体的な試行錯誤を奪ってはならない。
□ ICT機器の利用が学習者の学びの「身体性」を疎外してはならない。
□ ICT機器の利用が学び全体のサイクルの中で機能しなければならない。

ってところで、十分に検証しながらどんどん活用していこう!という結論。

こんなまとめで今回は終わりにしたいと思います。

かなりまとまってませんが、最後まで読んで下さった方ありがとうございます。

次回以降は、AI教材の具体的な課題について少しずつ紹介して書いていく予定です。

文字通り殺人的な暑さですね。
半世紀生きてきてこんな夏は記憶にないです。
皆様、くれぐれもご自愛下さい。

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GTEC の課題(私見)

GTEC for studentsを本校で導入して8年ほど経過した。
既存の模擬試験にはない画期的なコンセプトを持つ試験で
導入は正解だったと個人的には確信している。

模擬試験では、偏差値という「得点が持つ集団内の位置の価値」
という実体が分かりにくい数値で生徒に受け止められる。
「偏差値をあと5上げろ」といった無意味な指導も教科を
問わず行われているが、偏差値=学力ではないので
生徒の具体的な学力増進の指導には繋がらないケースが多いだろう。

その点、GTECは中学1,2年生からの英語力の伸長がスコアという
形で目に見えて分かる。

Writingでは70%前後を境に、得点のブレや誤差が大きくなり
3月の研究会でも指摘したとおり、高1時が最高得点者多数という
意味不明な結果が目立って出てきてしまうなどの問題があるが
Reading やListeningでは、学習の積み重ねがそのままスコア
に出るので、学習者も指導者も努力がどういう成果となって
いるのかについて十分な手応えを感じることが出来る。

しかし、である。
これを入試問題として使うには多くの課題がある。
3月の研究会では、

□ LT&CT要素が既存のセンター試験に比べても少ない

という点を挙げたが、今回のブログではそれ以外の問題点についても
簡単に指摘しておきたい。
私自身の不勉強や学力不足による誤解などがあれば
遠慮なくご指摘して頂ければ幸いである。

GTEC for students Listening

Part A 写真を見て内容に合う英文を選択(3択)×10問
Part B 問題も選択肢も放送のみで印刷されていないタイプの問題(3択)×10問
Part C 絵と会話を絡めた問題(4択)×10問
Part D 会話と講話(4択)×10問

新テストのサンプル問題で見られるようなLT/CT要素を試す問題も
TEAPのような資料のリテラシーを問う問題も見当たらない点を除けば
普通のListening問題であるが、大きな欠陥があるのはPart Bである。

かつて駿台予備校でリスニングの問題を模試に導入した際、
難易度が非常に高かったにも関わらず正答率がかなり高くなってしまった
という事例を駿台の研修会で耳にしたことがある。

このケースで問題となったのは、選択肢も放送してしまったことだ。
周囲の受験生の動きで解答が分かってしまうというのは試験として
致命的な欠陥である。

この点について、導入当初にGTEC実施側の営業担当者には直接指摘したことがあるが、
依然として改善されていない。

改善の必要がないと判断されたのか、改善すればそれだけコストが発生する
と判断されたのかは分からない。

センター試験においても、英文の整序問題などで選択肢が少なすぎるため
分かっていなくても正解出来るという問題が生じた年があったが
次年度にはすぐに改善されている。

民間試験というのは、営利を目的とした企業が行う試験なので
変えない・・・ということはないのだろうが、入試に民間試験を
導入する際には、ある程度行政や現場からの問題点指摘が
スムーズな改善に繋がるシステムが不可欠だと改めて感じる。

GTEC for students Reading

Part A 語彙問題:文脈から適切な語を選択する4択問題×14問
⇒ 名詞×4/副詞×3/接続詞×1/形容詞×2/動詞×4。
文法ではなく、あくまで「読む力に繋がる語彙力があるか」
を重視する点はTEAPと同じコンセプト。

Part B What is this passage mainly about? ×6
⇒ 問題としては一見、大雑把な情報処理を試す問題に見えるが
課題は誤りとなる他の選択肢(distracter)があまりに分かりやすすぎる。
LTもCTも必要ない点がセンター試験やTOEFLに比べて残念な点。
私は改善すべき課題だと感じている。

Part B チラシを用いた問題×8
⇒ 一見センター試験やTEAPと同じタイプに見えるが、GTECのチラシ問題は
チラシが文章で構成されている点が独特。というか、チラシなどの
情報処理問題ではなく、ただの古くからある読解問題になっている。
大量の情報をスキャンする能力ではなく、問題が聞いている箇所と
本文の英文を照らし合わせて照合するタイプの問題なので、AIでも解けそうな
単純な突き合わせ作業の問題。改善すべき課題だと感じている。

Part C 4~6パラグラフの読解問題×15
⇒ LT/CT要素を試す視点はほとんど見られない。単なるスキャニングと消去法
により解答出来てしまう問題ばかり。TOEFLで見られるようなSummaryやアウトライン
完成やセンター試験で見られる長文の空所補充問題などを入れるべきだと考える。

本来であれば、導入前に問題をしっかり分析し、指導要領にうたっている「新時代の学力」
を問う試験として妥当かどうかを様々な角度から検証すべきだったと思う。
3月の研究会では、私のような現場の一教員が出来るレベルではなくもっと多くの人材を動員して、「理想的な試験」の実現へ向けて大々的な検討が行われるべきだと
指摘したが、民間試験導入は既に決まってしまった。

今のままでは、この導入によって生徒の学力は向上するどころか
かなり下がるだろう、と思わざるを得ない。

現場の先生方も、試験を受けさせられる学生さんも、英語教育に関わる全ての
皆さんも、声を上げていきましょう。

どうせ駄目だと諦めずに、「このままではいけないのでは?」と感じるのなら
声を上げていきましょう。

誰かのせいにしても、何も生まれませんから。

AIの授業活用例(構想)

118 Did you ask Paul to play the violin

思いつきのレベルですが、ちょっと考えてみました。
既に実施されている事例があれば詳しく知りたいです。

★ Practice SpeakingにおけるAI活用

□ Practice Speakingとは?(上記のリンクからPDFファイルがご覧頂けます)

Practice Speakingという教材は従来共立女子中学で作成されていたペアワーク用会話練習ハンドアウトを体系化しNew Treasure 1~3までの文法項目を網羅する教材として2010~2012の時期に作成したものです。

この教材のコンセプトは共立オリジナルでも私のオリジナルでもなく田尻先生のTalk and Talkがコンセプトの元になっています。Practice Speakingは、検定教科書用に作られたオーラル練習教材を6ヵ年を見通した語彙や熟語などを取り入れつつNew Treasure用に改良したものに過ぎません。

□ 授業での活用例

概ね以下のような流れで活用しました。

1)文法事項の解説
2)教員と生徒全員で一斉練習
3)ペアワークによるタイムトライアル
4)時間内に出来た生徒のGood job シートにシールを貼る。
5)授業で数回扱う
6)復習教材としてPractice Writingを宿題として提出
7)綴りの間違いや文法エラーなどの添削を教員が行う。

一番課題として感じていたのは3)の箇所です。
田尻先生の授業では、教員が最後にチェックして
出来たかどうかを判断します。

本校は少人数制をとっていますが、それでも1クラスのサイズは
30名弱です。
これを授業内で教員がチェックするとなると、それだけで授業が
2時間ほど潰れてしまいます。

しかし、それをやらなければ、きちんと出来たかどうかが
把握出来ません。学校によっては、真面目にやらずに出来たと
手を挙げる生徒も多く出てしまうかもしれません。

また、もう1つの課題は「評価」です。
せっかく授業内に一生懸命に取り組んでくれても
それを授業内活動として評価することが難しい。

この2つの課題をクリアする可能性をAIの導入に感じています。

AIを搭載した英会話アプリのようなものは多いですが、
「オンライン英会話」の廉価版のような使い方ではあまり機能しないのではないか?

個人的にはそう感じていました。

ではどう使うか?

2)の後、または3)の後に、十分練習が出来た生徒は

A)ipadで練習⇒タイムトライアルを行う。

B)パス出来た時間が自動的に記録され、教員に転送される。
(発音や発話英文の精度・エラー数などもデータ化されるとなおよい)

⇒ 数値化されたデータがあれば、授業内での取り組み評価材料になる。

さらに、文字認識でAIが活用出来れば、7)における採点での
教員の業務が軽減され、教員のエネルギーをまた別のところに
振り分けることが出来ます。

経産省提言では、「知識・技能」習得を授業ではなく、AIを用いて家庭学習で行うという
方向性が出ていましたが、それが出来るのはかなりレベルの高い生徒に限定される
と思います。

むしろ、「知識・技能」習得の精度と能率を授業内で上げるためにまずAIを活用してみては
どうだろう?というのが私の今回の案です。

 

 

 

未来の教育を考えるシンポジウムに行ってきました

株式会社Z会ソリューションズ 後援 ESN英語教育総合研究会

未来の教育を考えるシンポジウム~学習者中心の教育の在り方~
https://www.facebook.com/events/212959379310802/?ti=icl

★ 「未来の教室」~民間教育・公教育・産業・先端研究の垣根なき学びの社会システム
(講演者) 経済産業省 サービス政策課 教育産業室長 浅野大介氏

<経済産業省 未来の教室とEdTech 研究会 第一次提言>
http://urx.mobi/KKFk

□「50センチ革命×越境×試行錯誤」
□「STEAMS×個別最適化」
□「学びの生産性」

今回の教育改革を主導している経済産業省の中枢が何を考えているのか、
直接知りたくて話を聞きに行きました。良い意味で予想を裏切られました。
登壇された浅野大介氏はワクワクする学びを子ども達に経験して欲しい、
純粋にそう思われていることを私は強く感じました。

 

労働生産性の向上、超高齢化社会や国際競争力の低下の現状から産業の活性化の為に教育に変化を、という話だとばかり思っていましたが、少なくとも浅野さんは学ぶことが楽しくて、
そういう喜びを1人でも多くの学生に知って欲しいというpassionを強く持たれているのだと思います。

名刺交換会で少しだけお話させて頂きましたが、その時にも目の輝きに感動しました。
もちろん霞ヶ関には色んな方がいて、浅野さんのような方ばかりではなさそうですが…。
むしろ浅野さんは少数派なのかな?

 

資料にあった「日本社会と教育の課題」については前提となる日本社会の課題とそれを教育がどう解決すべきなのかを短絡的に結びつけてはならないという漠然とした危機感を覚えました。(私の知識不足もあるかもしれないですが)

「日本社会は問題だらけ」→「教育を変えなければ駄目だ」

この図式は至る所で見られますが、資料の中でも「労働生産性」における「資本装備率」やTFP(全要素生産性)などの説明も正確な定義も見当たりません。

 

「社会保障負担を支える原資を生み出す産業界は労働生産性に大きな課題を抱え、その順位はOECD先進国の中で低い状態が続いている」

という資料の文言がありますが、日本の生産性(国際比較の場合には一人あたりGDP?)は1970年代から現在に至るまで、19位から21位の間を行ったり来たりしているだけです。

生産性の問題に限って言えば、

「世界が激変」→「変化についていけない日本社会と日本の教育」→「生産性の低下」

という図式は成立していないように思います。

教育と社会的停滞の相関性について冷静に緻密に分析し、
その上で課題を考えないと、「とにかく日本は負けたんだ。誰のせいとかでなく
1億総懺悔だ!」とヒステリックに変化を求める流れに全てが壊れてしまう可能性も
あると思います。

教育に何が出来て、何が出来ないのか、を個人的には冷静に考え続けていきたいです。

また、「自己肯定感」「自己効力感」という言葉も資料にありますが、
教育が変わり、子どもが変わり、こうしたポジティヴな人間が育つのかと言うと
そうとも思えません。

労働生産性の問題一つを取っても、
日本の「一億総懺悔」のメンタリティーが変わらず
「学校」も「会社」も全否定されているという
意識を植え付けられてしまうような現在の日本の風潮では
おそらく何をやっても「カイゼン」などというものが上手くいくとは思えないです。

ただ、資料はともかく、浅野さんのお話はとても面白かったです。
(浅野さんのお話は資料の説明ではなかったですから)

社会科少年が名門中高から東大・東大大学院に進み、官僚としてプロジェクトに
関わる中で、自分の学びに足りなかったものを痛感し、理系文系を問わず
多くの学問を学び直し、学びの楽しさを感じたという貴重な経験を
なんとか「苦行としての学び」しか知らない多くの若者に活かせないかという
熱い想いをヒシヒシと感じられる素晴らしいプレゼンでした。

エリートの劣化批判や公務員たたきが一部でありますがこんなに優秀で熱い想いを持った人材が日本の中枢にいてくれることに感謝です。

 

★教育理念の「鍛え直し」と「見える化」~確固たる存在の私学を目指して~

海城中高の中田大成先生のお話もとても刺激的でした。
特にブランド力をどう築き上げるかについての具体的な実践は
簡単に真似出来るとは思えないレベルの高い事例で、勉強になりました。
今の自分ではとても考えられるようなものではなく、
もっともっと学ばなければという思いを強く持ちました。

東大合格者数の圧倒的実績がある中で、他の学校と交換不可能な
School Identityを模索し、「中学生の卒論発表」「模擬国連参加」
などのプロジェクトを通して、「ワクワクする学びの体験」を
生徒にどう持たせるかを真剣に考えてこられた真摯な姿勢に
ただ頭の下がるばかりです。

アウトカム重視から計算不可能なことを設計する改革では
平田オリザさんのドラマエジュケーションの話がとても興味深かったです。

先日、内田樹さんの「人口減少社会の未来学」の中での
平田オリザさんの文章に感銘を受けたばかりだったので
余計に衝撃的でした。

また、広報戦略のレベルの高さについては、ただただ、感動しかありません。
こうしたクリエイティブな教員の資質が海城の教育の質をここまで向上させてきた
のだと思うと、教員としての自分に努力が足りないことを痛感させられました。

★学習者中心の教育を実現するために~生徒目線で考える「淑徳与野」の学びの環境~

淑徳与野中高の黒田貴先生のお話は、生徒の日常の学びや成長をどう改善していくかについて
具体的な事例を取り上げながらの説明で、とても参考になりました。
教育は特別な日に食べに行くフランス料理ではなく、まさに家庭料理と考えて改善に取り組むべきだと普段から思っているので、とても共感出来る部分が多かったです。

特に、「権限なきリーダーシップ」については勉強になりました。
立教大学のリーダーシップ教育との連携による「インパクト体験棚卸し」
というユニークな取り組みは、今後時間をかけて大きく進化していくことを
予感させられました。

その他、研修会でお会いできた皆様からもとても良い刺激を頂きました。
ご縁に感謝です。

私の人生は本当に人との出逢いに恵まれているなぁと改めて強く思いました。

以上、長々と単なる感想でした。
最後までお読み頂いた皆様(あまり多くないでしょうが(笑))
ありがとうございました!

英文法の学習について(研究会質疑応答より)

英文法の学習について

2018年3月29日の研究会発表の後の質疑応答で以下のような質問がありました。

「文法自体がLogicalになっていないという意見についてどう思われますか?5文型文法は良くないということもよく言われますが、その点についてどうお考えですか?」

当日は以下のように答えました。

「中1から高1・2辺りまでダラダラと文法指導をしているが中3~高1時に、理論を理解する思考力が充実してくる時期に、集中的にやるべき。」

十分なお答えでなかったのがずっと引っかかっていました。

多分、質問された方の真意を私が不勉強でその場で十分理解してお答え出来なかったこともあると思います。

この質問は以下の2つのいずれか(または両方)の点を問題にされているのだと思います。

① 文法そのものは、全て理に適ったものとは限らないし、文法を学びその通りに英語を使おうとしてしまうと、上手く英語が使えないなど 実際に英語を使う場面で役に立たない知識となっているものもあるのではないか?例えば5文型など。

② 文法を学んで知識として身に付けても、論理的に英語を理解したり話したり書いたりする能力はつかないのではないか?

いずれの場合であっても、ご指摘はその通りだと思います。

①については「文法のための文法」で、英語を使う場面ではほとんど何の意味もないような知識なら、その習得には時間を浪費すべきではないと考えます。

Reading/Listening /Speaking/Writingのあらゆる場面で必要な文法知識を優先して学ぶべきであり、「知識」として持っていても、使う場面で意味がないようなものは、文法そのものが大好きな生徒は除いて、一般の高校でも教える必要はないとも思います。

ただ、ネイティヴが意識した知として持っていなくとも知っておくことが、ネイティヴの思考を理解することに繋がるような知識もあり、それらについては学ぶことの意義を否定せずとも良いと考えます。具体的には比較におけるtheやnoの使い方などは理解しておく方が使う場面では適切に使えるのではないかということです。

また最近では、例えば不定詞の用法を文法用語で解説する従来のタイプの教材や授業から
一応そうした解説はしながらも、toのコアイメージを重視したシンプルでありながら本質的理解に繋がるような理解を目指した解説をする教材や授業も増えてきていますので、よい方向に進んでいると私自身は考えます。安易な文法軽視がこうした流れまで否定してしまうことになってはならないのではないでしょうか。

②については、質問の意図にはなかったのかもしれませんが、これも当然で、文法の学習と論理思考の学習は、少なくとも中高生の学習においては本質的にはあまり関係ないと思います。
(ただ、文法を研究されている学者ならそうとも言えないとも思いますが

蛇足になりますが、文法学習全般について以下に私見をまとめておきます。
現場の英語教員が文法をどう考えて指導しているか、単純な文法指導の肯定や否定ではなく、一つのテーマとして個人的にも理解を深めたいと思っていますのでご意見があれば是非お願い致します。

私は文法学習も文法指導も必要だと考えます。

子どもと同じように語学を学べば文法など意識しなくても英語を使えるようになる、というのは正しいと思いますが日本で英語を勉強するという環境を考えるとそのやり方では膨大な時間を浪費することになりますし、いわゆるイマージョン教育だけでは習得能率は上がらないことも最近の科学的知見では実証されている通りです。

「慣れて身に付ける」が難しく、非効率的であるのなら「理解して身に付ける」ための文法学習は否定されるべきものではないと思います。

ただ、所謂「文法問題」を解くということをゴールとしてしまうと「文法学習」が目的化してしまうため、「ルールの丸暗記」に追われてしまう学習になってしまいます。これはそれほど意味があるとは思えません。

新センターや民間試験のReading問題の良い所は文法問題そのものを出題しないことです。

入試問題でも、語法の知識を問う問題はまだまだ多いですが、文法に関する知識を問う問題の出題は難関大ほど減っていますしこれは良い傾向だと思います。

文法問題を解くための「知識丸暗記」の文法学習ではなく、「ハートで学ぶ英文法」のように
ネイティヴの思考を身に付けるための「理解」の為の文法学習を、短期集中的にしっかりやるべきだと思います。

また「5文型」を中心とした文法というよりは「構文分析アプローチ」という方法論についても一言(長いですね…すみません)。

駿台予備校の伊藤和夫さんなんかが代表的存在と言えるのでしょうか?
「英文解釈教室」は私も学生時代読みましたし、英語を構造から理解する方法論としては、素晴らしい名著だと今でも思っています。ただ、こうした方法論には「限界」がつきものです。

最大の欠点は、「漢文読解のように英語を読む癖」がついてしまうことです。
これは大きな欠陥であり、弊害も大きいと思います。伊藤先生ご自身も、「最終的には無意識化に置くべき知」と認識しておられたと思うのですが、万能ツールのように考える人は昔は多かったですね。当時は哲学などで「構造主義」が流行っていたからなのかもしれません。

ただ今でも、そこまで難解な理論でなくても、「構文分析的なアプローチ」は「和訳」の出題が多い国公立大の個別試験では今後も必要とされ予備校のみならず、高校の授業でも一部行われていくのかもしれません。その学習に偏った学生にとっては弊害も無視できないですね。

では、「和訳」が悪なのか?というとそうとも言い切れないと私は思います。

要は英文を直読直解する時と日本語に変換する時では別の読み方をすればよいのかなと思っています。

また、母語と外国語の両方のレベルをアカデミックなレベルで高める必要がある学習者には
和訳の出題もありかなとも思います。日本語と英語の違いを、構造的なアプローチが学習者に認識させる大きな役割を果たす可能性があるからです。

ただ、最近は、「所謂、構造分析力そのものを問う問題」も難関大ほど減っているように思います(特に京大・阪大以外)。

東大の4-Bでは例年和訳が出題されますが最近では「構造の理解」よりも「意味・文脈」
を重視する流れに変わってきています。

下線部の構造分析さえ出来れば出来る問題ではなく全体を英語であろうが日本語であろうが深く読めていないと解けない問題になってきているので、こういう出題であれば「構文偏重」ではなく、「読解力育成」の方に指導も行かざるを得ないし、英語の精読学習も促進されるので
よいのではないかと考えています。

きちんとしたお答えになっているかどうか分かりませんがこの場で改めて発信させて頂きました。

ご質問頂いた先生、本当にありがとうございました。出来れば直接お話し出来れば、もっと的確にお答え出来たのかもしれません。是非、その機会があることを願っています。私自身の勉強になる知見をお持ちの先生だと感じました。ご指導よろしくお願い致します。

 

 

 

2018.3.29 ESN 東京第6回春期英語教育セミナー発表概要

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終わった瞬間、身体がドッと重くなりました。
自分では必ずしもベストな発表をやり遂げたという充実感はなかったのですが少なくとも今自分の中にあるものは全て出しきったからなのかも知れません。

今回のセミナーで私が一番訴えたかったのは、それぞれの立場からポジショントークするのではなく、あるいは自分と違う考えの人間をそう批判するのではなく、日本の未来を担ってくれる若者たちのために一致団結して頑張りましょう、という単純なことです。

多くの方々から、是非プレゼンの資料が欲しいという有難いお言葉を頂きました。ただ、学校内のデータということもあり、お土産としてお持ちいただいた資料以外の提供は差し控えさせていただきたいと思います。申し訳ありません。

その代わりという訳ではありませんが、以下発表の概要をまとめさせて頂きます。
何かのお役にたてば幸いです。

また、プレゼンに先立ち、司会の木幡教諭からご紹介頂いた「1000 TEXTBOOKS PROJECT」
に大きなご理解とご協力を頂けたことをこの場を借りてお礼申し上げます。
皆様の暖かいお気持ちが伝わってきて、募金箱を見た時に涙が出そうになるほど嬉しかったです。

そのご協力の呼びかけも含め、これだけ多くの人の輪を作って下さった代表の久保先生、会場校としていつもご協力を頂いている十文字中高の橋本先生と多くの先生方、今回は裏方として最も面倒なお仕事を全て引き受けて下さった高瀬先生、会場の準備から会の運営協力までご協力頂いた企業の皆様、素晴らしいプレゼンで会を盛り上げて下さった日野田先生、長井社長、急なお願いにも関わらず快く司会を引き受けて下さった木幡先生、そしてお忙しい中お集まり頂いた多くの皆様と仲間たちに心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました!

また現場に戻って、ワクワクしながら進化したいと思っています。

皆様に再びお会い出来る日を楽しみにしております。

中高英語指導の現状と今後の課題 ――― LT/CT教育の必要性 (約80分)

【2015年基調講演と共通する大前提】
生徒は生身の人間。「スマホやゲームより英語が好き」と いう生徒を育てることが理想だが、大半はそうではないし それがある意味健全。多くの教科の中の1つとして英語があるという点を考えると、中高生の家庭学習時間は50分が限度。過度な英語教育で成長時期にある中高生のバランスを崩してはいけない。(自分の過去の指導の反省も込めて)

【発表内容(項目)】
【00】民間4技能試験導入をめぐる報道など
【01】民間4技能試験と従来型試験の相関関係と問題分析
【02】多様化し続ける入試と生徒の現状
【03】LT/CT教育(思考力・表現力指導)の必要性

【発表内容の概要】★は私の意見です。◆は書籍などの資料です。

【00】民間4技能試験導入をめぐる報道など

□ 2月末まで:英語試験の民営化=善 大学=悪:抵抗勢力
□ 3月中旬 :東大の発表「民間試験のスコアは利用せず」
⇒ 各紙慎重論が出始める。⇒ 3/26 民間試験採用の報道
★ 事前対応<事後対応 の日本人の欠点。
問題提起・議論をやる前に尽くし、入試改革をすべき。現状維持はもちろんまずい が、変えればよいという強引な変化は何より生徒にとって大きなマイナス。

◆ 「史上最悪の英語政策」(阿部公彦著 ひつじ書房)
★ TOEICの目的が「米国の労働者の語学力の選別」であること、「民間試験」の導入が業者利益に偏った決定であることなど、今回の「英語改革」の舞台裏を資料をベースに批判した点は勉強になるし、適切な問題点指摘だと考える。が、Speaking試験導入の是非や現状の入試の課題について、個人的には説得力を感じること が出来なかったし、民間試験や入試問題そのものに切り込んだ分析が少ない点が不満。

◆ 「2018.3.4 AERA記事:南風原教授と安河内先生の討論」
★ 全くかみ合わない議論。ここでも具体的に試験問題をベースにお二方が具体的なものを共有して議論出来ていないので、個人的には不毛な議論と感じた。

◆ 「英語教育の危機」(鳥飼玖美子著 ちくま新書)
★ 幅広い英語教育の方法論から、今回の「民間試験導入」に反対の立場をとった本。カリスマ的存在の言葉だけに勉強になるが、4技能試験の実体に切り込んでいない点が個人的には不満。

◆ 「ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語」
(斉藤淳著 ダイヤモンド社)
★ 否定・肯定を超えて、「英語学習はどうあるべきか?」を多くの科学的知見を用いて子どもの成長課程ごとに方法論を紹介してくれる良書。個人的にはとても勉強になりヒントを得て授業改善に取り組んでいる。が、民間試験についてはそれほど分析はない。

□ 2020年は思考力重視の改革では?
□ 民間試験の実体についての分析があまりにも不足では?

⇒ 今回の発表の「問題意識」=「出発点」

【01】民間4技能試験と従来型試験の相関関係と問題分析

① GTEC(RLW)/TEAP(RLWS)と従来型試験の相関関係(相関係数利用)

□ 難易度  : TOEFL/難関入試>TEAP>GMARCH>現センター>GTEC
□ LT/CT要素 : TOEFL/難関大入試 > 新センター > 現センター > TEAP > GTEC
★ 民間試験導入で生徒の英語力は間違いなく落ちる。
★ TEAP/GTECでは思考力を問う問題が従来型より少ない(TEAPはグラフ問題に大きな問題点あり)

□ 相関関係 (当日は相関係数と分布図で分析)
○GTEC難易度 : 高3の春段階でセンター平均点とほぼ同じ。RLWの平均はほぼ70%。
○GTEC R相関 : ベネッセ記述模試>センター>駿台全国模試>定期試験(いずれも高い)
○GTEC L相関 : センター試験Listeningとの相関が高い
○GTEC R/L/W : RとLは高い相関。RとW/RとLは低い相関。
×GTEC W相関 : 相関そのものが弱い/70%到達は中学段階で可能/他の試験の成績と関係なく横一線に分布。GTECのR/Lのスコアとの相関も低い。Wは「別の英語力」という位置づけでよいのか?誤差が大きく高3時より高1時がベストという生徒が多く見られる点が最大の課題。

★ Reading/Listeningは、コスト・思考力・難易度のどの点を考えても、新センターの方が遥に上。
★ Writing試験は分布の偏り、誤差の大きさから導入は避けるべき。、
★ Writing試験では答案の論理が採点出来ていない(後半で実例を用いて指摘)。

○TEAP難易度 : RL(難)>SW(易): TEAPのRLはGMARCHレベルかやや高い。
○TEAP R相関 : TEAP Reading > ベネッセ模試 >  定期試験 (いずれもそれなりに高い)
○TEAP L相関 : TEAP Listeningとそれなりに高い。
○TEAP W相関 : ベネッセ模試・定期試験との相関係数はGTEC同様低いが、分布は正常。
○TEAP S相関 : GTEC Writing / ベネッセ模試 /定期試験 いずれとの相関も低く、分布が異常。
○TEAP R/L/S/W: S×L (相関係数は高いが分布が異常でListening40%程度でもSpeaking90%という例も珍しくない)S×R (相関係数は高くはなく、分布異常。Reading30%台と70%台のスコアが変わらない例も多い)S×W (相関係数は高くはなく、分布異常。Writingの成績に関係なく60~80にスコアが集中)

★ Reading/Listeningはセンター受験層には高すぎる難易度。
★ Writingは相関そのものは高くないが、分布図を見れば点数がばらけており科学的信頼度は高い試験と判断。ただ、これはSummaryに特化しているためで、「発信型学力重視」がコンセプトなら全く別物の試験。
★ Speakingは高2秋段階で65%(最低点でも50%弱)に到達出来、一部難関大難関学部を除けば短期対策で十分到達可能な試験。「オンライン英会話」「授業内のOral活動」など現場は発信力強化への取り組みを行っているが、コスパを考えた安易な対策が横行すれば、むしろ現場のSpeaking教育にマイナスの効果をもたらしかねない。

★ 民間導入は決定事項。本来ならこうした分析を基に改善を求めた上での採用が望ましかったはずだが手遅れ。生徒のために、民間試験業者には、是非「利益を度外視した」改善を望みたい。それが不可能なら、各大学が実体をしっかりと把握した上で、各検定試験の目的と合致する一部入試に限定した利用が望ましいと考える。
② 4技能を各スキルごとではなく統合した試験の提案

★ Writingについては、現状の入試英語(東大・一橋大・慶應大経済など)の方が課題はあるがコンセプトは民間より上。
★ Opinion Writing / Summaryに特化せず、多様なスキルを問う問題にすべき。
★ Speakingについては、1つのスキルとして切り離すべきではない。
★ 4技能を統合した試験を行うべき。
(具体例①) 講義の内容を聞く ⇒ Listening Test ⇒ 関連文書を読む ⇒ Reading Test    ⇒ Summary / グラフ分析 / Opinion Writing など ⇒ それを基に英語面接やディスカッション
※ センター実施は無理なので、少人数に絞れた段階でこうした試験を各大学が実施すればよいのでは?
(具体例②) 旅行プランに関する文書を読む ⇒ 選んだ理由をWriting ⇒ 選んだプランでプレゼン※ 当日はご紹介出来ませんでした。立教の観光などでやれば面白いのでは?
具体例①のようなやり方はアカデミック学力重視の学校がやればよいし、具体例②のような
やり方は各大学で多様なアイデアを出せば、大学の多様性を実現出来ると思います。
★ 入試Writingの大きな課題
× 解答やコンセプトについての発信が全くない無責任な姿勢。
× 誤差の大きい問題であることはある程度避けられないが、誤差を小さくするための検証・改善を求めたい。
× 誤差が避けられなくても、4技能統合型試験を行えば、総合的に学生の能力を判断出来るのでは。

③ 民間試験導入の悪影響

□ 地域格差:鹿児島在住ならTEAPやIELSは福岡まで受験しに行く必要がある。明らかな問題なので直ちに改善を!
□ 入試における不公正の拡大
複数の選抜方式の中で、TEAPや英検採用試験の方が母集団が低い傾向が強い。
定員抑制+複数方式の影響で特に早稲田大学では1年ごとに全くハードルの高さが変わる入試。
★ 定員抑制は大学の決定ではなく行政の問題だが、そもそも定員は教育条件であり、これまで取り過ぎていた大学の経営方針も問題。民間試験導入を、「公平性の問題」として批判する大学がどの口でこういう不公平を被害者面してやっているのか?
□ 短期対策型の学習従来型入試よりもやりやすくなるため、現場の英語教育はかなり安易なものにシフトしかねない。
□ 民間試験導入で文法独立型問題などは減り、読解問題が増加すれば歓迎だが、思考力型問題が増えなければ学力の質的変換では済まなくなり、確実に学力低下する。
★ 入試英語はHOTS(Higher Order Thinking Skills)の方向性で変わらなければならない。

【02】多様化し続ける入試と生徒の現状

① 2020年教育改革について
【参考資料】
□「2020年の入試問題」(石川一郎著 講談社現代新書)
□ PISAランキング推移
□ 公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター資料
□ 「不死身の特攻兵」(鴻上尚史著 講談社現代新書)
□ 「新・生産性立国論」(デービッド・アトキンソン著 東洋経済新聞社)
□ 新センター試験サンプル問題(国語)とベネッセ・産経新聞記事
□ 「大人のための国語ゼミ」(野矢茂樹著 山川出版社)
□ 「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(新井紀子著 東洋経済新聞社)
□ 某塾の発信:教育改革=産業界からの養成について

★ 経済の発展・衰退を教育に過度に結びつけて捉える「一億総懺悔」のメンタリティーが大問題。
★ 労働者の質は世界4位。教育のレベルも世界トップレベル。「生産性の低さ」は無能な経営者・産業界では?
※ 人口増加の追い風を受けるアメリカの教育をお手本とするのが本当に良いのか?世界中で戦争しまくっている
国と教育の相関すら問題にならない点が不思議(当日は時間がなくてこのコメントはしませんでした)。
★ 英語だけでなく、「国語記述問題(サンプル)」は酷過ぎる。それを解きもせずに褒め称える劣化したマスコミ。
★ 真の記述力とは?「大人のための国語ゼミ」は英語の教材としてもお手本になる良書。
★ CEFR/ブルーム/学力の3要素を縦に並べた「物真似」が、「真似」を否定する愚。

② 多様化してきた入試英語
□ センター入試:1991年グラフ問題⇒1992年文整序問題⇒1998年文空所補充問題(TOEFL IBTより早い)
□ AIが得意なセンター世界史とは対照的に、センター読解はAIが解けない思考力問題(AIに出来ない仕事スキル)
□ 東大・早大・慶大・上智大など難関大ではLT要素を入れた読解問題を早期から導入している。
□ GTECのReadingは情報処理系が中心。LTはともかく、CTはほとんどない。
□ TEAPのReadingはGTECよりはLT/CTを入れているが、グラフリテラシー問題は作問コンセプトがおかしい。
□ TOEFL Readingは14問中5問がLT/CT問題。ただSummary完成などは早大(法・国教・スポ)の方が早くから導入。
□ TOEFLは良質な検定試験だが、目的が限定的なのと難易度が高いため採用妥当校は限られる。
★ TOEFLを超える試験を開発し、海外に輸出出来るHOTSレベルの試験を目指すべき。日本人の教育をアウトソースすべきではない。
③ 生徒の現状から出発した教育改善を
□ 生徒たちが、「何が」「何故」出来ないのか?どうすれば出来るようになるのかを、生徒を見てまず考えるべき。
□ 現在の生徒の弱点: 1)Logical Thinking Skill  2)記述力 (Super English Seminarのデータを基に)
□ Logical Thinking Skillのスコアと従来模試の相関は低い ⇒ 入試と模試の相関もその分野は低くなる。
□ Logical Thinking Skillが高い学生ほど、難関国公立大・早慶実学系・国立医学部レベルに進学している。
□ 記述力では特に「要約」が苦手な生徒が多い。(上位者ですら点数が安定しない)
★ 英語ではこの2つの弱点はWritingで最も深刻な形で露呈してしまう。

GTECで比較的高得点(70%以上)を貰っている生徒たちの添削後の英文の問題点を実例を用いて考察

★ Opinionの根拠にFactを使えない。根拠として個人的経験を用いる例、Opinionを言いっぱなしにする例が多すぎる。
⇒ 特異な個人経験を強調するCM/教科書の英文/入試長文の英文/政治家やマスコミの発信と驚くほど似ている。
⇒ Logical な能力が不足している生徒が多いのは、「大人」がLogicalな能力を欠いているからではないか?

★ 「具体」と「抽象」を上手く使って構成出来ない例
⇒ 個人的な経験=具体だけを大人が子どもに押し付けてはいないか?

★ 上から目線で子どもに要求するだけでなく、大人も一緒にHOTSを目指して進化しましょう!

【03】LT/CT教育(思考力・表現力指導)の必要性

□ CTとは何か? (2002年 上智短大 岩崎明子氏の文章 「研究ノート」)
□ CT=民主主義社会における市民教育の充実のために不可欠。
★ 今の日本は危ない
× Red HerringやStraw Manなど使ってはいけない「論理の誤謬」を用いた発信
× 嘘グラフによる情報操作
□ Washington Postの記事:Googleで成功するために必要なsoft skillの1つ= Critical Thinker / Problem Solver

★ 「官か民か?」「国内か国外か?」「学校か業者か?」ではなく、All Japanで「思考力養成」を実現しましょう!

【CM】 □ 教育開発出版 English Discover /  Z会 New Treasure 1~5

大学入試センター発表 平成29年度試行調査問題(英語)の分析

現行のセンター試験に代わる英語のサンプル問題が公表されたので
リスニングと読解問題を解いてみました。

3/29の研究会の発表では、この問題についての分析は触れないので
ここにまとめておきたいと思います。

私は大学入試センターという団体を肯定的には見ていませんが(笑)
民間の英語試験のReading / Listeningよりもはるかに良質な問題だと
判断します。

移行期間限定ではもったいないので、是非民間試験導入ではなく
Reading / Listeningはセンター試験で実施してもらうことを望みます。

□ Listening Version A (Version BはA(20問)+10問)

<概要>

2018年1月実施のセンター試験リスニングは難化したが、そのベクトルで問題を難しくしようという意図はないと感じた。
あくまで、「知識 < 考える力」を意識し工夫した問題が目立つ。難易度は決して高くないが、センター試験のリスニング問題としては、従来のものよりは更に良くなったと個人的には感じる。
GTECのリスニングでは、選択肢英文を読み上げるため、大会場では、他の受験生が鉛筆を持ったりマークしたりする気配や音で「集団カンニング」に近いことが起きてしまう(個人で何回か指摘したが改善されてない)が今回の問題ではそういう素人的な穴も見当たらない。
導入候補となっている多くの民間検定試験より、今回の問題の方が難易度も質も備えた問題で、はるかに良問であるというのが解いた後の私の印象である。

<設問別分析>
【第1問】
A(3問) 放送される英語と近い意味の英文を選択する問題。
⇒ 文法的な知識や音の聞き分けではなく、状況を把握する能力を試す問題。

B(2問) 放送される英語の内容を表した絵を選択する問題。
⇒ 基本的な文法知識がないと文意を正確に取れないので知識を聞いている問題。

【第2問】3問:放送される対話の内容を表す絵や地図内の場所を選択する問題。
⇒ description(描写)表現や位置関係表現が基本的な英語が分かっていれば基本的な問題。

【第3問】 3問:対話を聞いて内容に関する質問に答える問題。
⇒ 対話の内容が分かれば、そのまま答えられる問題ばかり。「聞こえた英語」をそのまま答えるレベルの学生でなければ、理解出来る程度の問題。

【第4問】 1問:4名の英語を聞き、「経験・英語力・スケジュール」の3つの条件を満たす人を選ぶ問題。
⇒ 「思考力問題」としては基礎レベルだが、これまでのセンター試験にはないタイプの問題。情報の整理に表を使わせるのはLogical 系問題としては定番だが良問だと思う。

【第5問】 4問:環境問題をテーマにした問題「服とゴミ・エネルギーの関係」
⇒ ワークシートを完成させ講義のSummaryを作成させる問題は東京外大と同一形式(レベルは外大より易)知識があれば英語を聞かなくても完成出来なくないが、逆に常識レベルの知識がなければ何を言っているのか分からない生徒もいるかもしれない。また、講義の内容では直接触れられていない話者の主張をinferして答えさせる問題、グラフと内容の一致を問う思考力系問題も1問ある。

【第6問】
A(2問):修学旅行についての2人の大学生の対話。
⇒ 2問ともWhat is the man’s(woman’s) main point? 式の概略を問う問題であるが、実際には各選択肢の内容が話と矛盾しないかどうかを消去法で解くタイプの問題。情報処理系の問題。

B(2問):「炭水化物を積極的に摂取するかどうか」をテーマにした問題
⇒ 「すべて選びなさい」という形式の問題。「新しい試み」と最近よく話題になるが、早稲田・教育の入試英語では1980年代からこうした形式はあった。一歩間違うと悪問になりかねない形式だが、今回の出題は見事。
⇒ 1問目は「それぞれの話者の発言内容が、炭水化物積極摂取に賛成か反対か」を焦点に聞かせる問題。2問目は話者の話している内容が「グラフ」と合うかどうかを聞く問題。不正解の3つが簡単に見分けられるのでグラフ問題としてはもう少し工夫が欲しいところ。

□ 読解問題

<概要>

テーマパークやぐるナビに似たサイト情報が題材になっていることが目新しさを感じさせることは確かである。
海外滞在中に必要なReading力が「アカデミックな英文」ではなく「標識」「説明書」「薬などの服用における注意」「観光地やレストランに関するガイドブックやネットの情報」であることを考えると、2020年の教育改革のテーマになっている「日常から出発する学び(日常が終点ではない)」に合う問題だと思われる。(あくまで私的解釈である)
ただ、解答に必要な能力を分析してみると、「スキャニング能力+消去法を用いることが出来る読解力」である点がそれほど変わっていない問題も多い。全てを思考力型にする必要もないのでバランスが肝心だが、概ね良いバランスであるように思う。
他でも発信があるので詳細は省くが、音声問題、文法問題、整序問題などは消えた。
これも方向性としては正しいコンセプトだと私は考える。
ただ、知識系の問題にしか対応出来ない生徒が具体的な学習内容を見失う影響は心配される材料。単語テストや文法・構文のミニテストを日常レベルの学習で課している学校も多いだろうが、重箱の隅を突く問題を聞くような教育が減るのは歓迎だろうが、「試験に出ない」という理由で勉強しなくなる子へのケアーが必要になる。
また深い知識がなくても表面的な情報処理で対応出来る問題が多い。思考力系問題にチャレンジしているのは素晴らしいし、民間試験の多くをはるかに超える良問だと私は感じるが、得てしてこの手の問題になると生徒の日々の地道な努力より元々の生徒地頭や読解力が大きく点数を左右することが多い。
この点についても、現場の教育が「試験対策」ではなく「思考力とともに知識の重要性」をどこまで強調出来るかが課題になると感じた。

<設問別分析>
【第1問】
A:2問 海外の遊園地のWebページを情報源にした情報処理系の問題
⇒ 解答に必要な本文該当箇所をスキャニングし消去法で処理出来る問題。従来型センター試験では表や図に根拠がある問題が多かったが、2問とも英文情報がスキャニング対象となっている。

B:3問 大学のポスターを情報源にした情報処理系の問題
⇒ ポスター内の情報を統合して内容を確認させる問題の出題も1問あるが、従来型センター試験と同様に情報処理能力を見る問題が2問。

【第2問】
A:4問 ぐるナビのようなサイトの情報を題材にした読解問題
⇒ それぞれの料理店についてのコメントと合うものをスキャニングし消去すれば確実に正解できる問題が2問。複数あるコメントを総括するとどう言えるかを問う思考力型問題(超易)が1問。Fact か Opinionかを問う問題で複数解答方式だが、狙いは思考力問題として非常に良い。しかし、正解を見ると、こうした出題では細心の注意が必要であることを改めて感じさせられる。

 

1  Annie’s Kitchen offers dishes from many countries.       manyよりopinion
2  Johnny’s Hutt is less crowded than Shiro’s Ramen.   dataがないので判断出来ない
3  Johnny’s Hutt serves some fish dishes.    書き込みよりfactと判断出来る
4  The chef at Johnny’s Hutt is good at his job.   goodよりopinion
5  The chef ’s meal-of-the-day is the best at Annie’s Kitchen. the bestよりopinion
6  The menu at Annie’s Kitchen is wonderful.    wonderfulよりopinion

これで正解が1,3となっている。そもそも、Fact/Opinionの判別問題であるにも関わらず、論拠を書き込み(opinion)にしている点も作問として問題である。1をFactとする根拠を The menu is 13 wonderful pages long with food from around the world.に求められる、とするのは無理がある。ただ、検定試験には見られないこうした出題形式は狙いは非常によいので、慎重に作問をして貰えれば良問になるはずの問題である。

B:5問 ディベートの準備をする学生の立場に立ってボランティアについての記事を読ませる問題
⇒ 5問とも単純な情報処理ではなく、本文に書かれていることを基に考えさせる工夫が見られる問題。アンケート結果から質問を考える問題が1問、賛成反対の立場の生徒が活用出来る箇所を答えさせる問題が各1問。本文の内容を確認する問題でありながら、きちんと抽象表現が読めていないと具体が見えない問題が1問。筆者のスタンスを聞く問題(Critical Thinkingレベル)が1問。難問はないが、思考力をきちんと問う良問。

【第3問】

A:2問 題材はブログ。ただ、従来のセンター試験と大きく変わる問題ではない。
⇒ 場所情報、内容一致不一致をスキャニングと消去法で処理させる情報処理系の問題。

B:3問  セールスマンによる新聞の投稿記事。「機械が人間の労働を奪う」という最近よく見られるトピック
⇒ Time/Space Orderに関するLogical Thinkingレベルの問題が1問。内容一致不一致に関する情報処理系の問題が2問。

【第4問】5問: ボランティア活動についてのグラフと2人のレポートが題材。
⇒ 内容に関する情報処理系問題が4問。タイトルから2人のボランティア普及活動に役立つ記事を推測させる問題(Critical Thinkingレベル)が1問。バランス的には情報処理系が多いので、もう少し思考力型問題が欲しい。

【第5問】
A:3問 折り紙についてアメリカ人学生が書いた英文を編集者の立場として読む設定の読解問題。
⇒ 全体の要旨を問う問題が1問、筆者のintentionを聞くCritical Thinkingレベルの問題が1問、従来のセンターやTOEFLiBTで見られる文章の空所補充(Logical Thinkingレベルの問題)が1問。バランスも題材も素晴らしい。

B:6問 黒胡椒、白胡椒の違いと効能について(アウトラインの完成)
⇒ Outline / Compare & Contrast作成/ 要点まとめ というLogical & Critical Readingをさせる問題。難易度は高くないが、日頃からReading Strategyを意識した読解の学習をしていない学生には厳しいかもしれない。Reading PowerやNew Treasure のような教材で学んでいれば、容易に対応出来るはず。複数解答の問題が2問あるが、きちんと読めば迷うことはないと思われる。

【第6問】5問:物語作品のReviewを書く設定で物語文を読ませ、アウトライン、登場人物、自分の意見などを完成させる問題。
⇒ Outlineの空所補充が2問、登場人物の気持ちを選択させる問題が1問、意見を完成させる問題が1問、どんな人にお勧めかを判断させる問題(Critial Thinkingレベル)が1問。

定員厳格化による入学者抑制の影響

定員厳格化による入学者抑制の影響

2018年3月29日の発表が近くなってきました。
何度やっても緊張するものですが、
新しい人たちとの出会いも含め
今の自分が変わっていくことにワクワク
する気持ちも強いです。

今回の発表では、

① 民間試験と従来型試験の相関関係
② 入試英語と生徒の現状
③ LT/CT教育の必要性

の3つをテーマにお話しするので
2015年の時に触れた、直近の入試分析については
ほとんど触れる予定がありません。

ということで、今年の入試状況分析をブログで
ご紹介させて頂きます。
あくまで私個人の分析ですので、Factをベースに
したつもりですが、Opinionもかなり含まれるものとして
それぞれ Critical にお考えの上、お読みいただければ幸いです。

今年の入試についての分析はまだこれから続々と出ると思いますが
一昨年(2016年の入試)から始まった定員厳格化=入学者抑制=合格者数激減
の影響について、あまりご存知ない方は以下のサイトなどをご覧下さい。

http://between.shinken-ad.co.jp/hu/2017/07/nyushikekka.html

今回の投稿では、こうした一般の分析では見えにくいところを中心にお話しさせて頂きます。

厳格化

(毎日新聞記事より)

上の表から分かるように、2018年の入試は2016年から始まった定員厳格化の影響で、かつてないほど厳しくなった。先ほど紹介したベネッセのサイトは昨年の結果であるが、分かり易いのでグラフをご紹介しておく。

厳格化3

厳格化2

厳格化4

上記の3つのグラフから分かることは、ベネッセの分析通り以下の2点である。

① 首都圏の大学が合格者を段階的に絞り込んでいること。               ② センター入試よりも一般入試で絞込みを行っていること。

しかし、実はこれだけでは以下の早稲田大学などの合格者数変動という事象の説明がつかない。

2016年入試(117%上限)では大きく合格者数を減らした高校が目立つのに2017年入試(114%上限)では合格者数を回復した高校が多い。

この謎は以下のデータを見れば解ける。

KO

早稲田

厳格化5

(補欠合格を除く早大(文・文化構想)倍率)

ここから読み取れることは以下の4点である。

①早慶ともに偏差値の高い実学系学部では入学者を絞っていない(元々多く入れていない)             ②定員抑制が人文系学部に集中して行われているため、見た目以上に厳しい入試となった。     ③2017年の早大入試ではTEAP入試が早大入試史上例を見ないほどぬるい入試であった。     ④2018年の早大入試ではTEAP入試がセンター1科目利用受験並みの倍率に上昇し難化した。

今後は早稲田大などはAOや推薦枠を増やすことを検討しており、一般入試では更なる激戦が予想される。(4割から6割を推薦・AOへ?)

http://news.livedoor.com/article/detail/10913922/

こうした大学の方針転換を、早大は「東大落ちではなく、早大への入学志望が高い生徒を取りたい」と説明しているが、これは本当だろうか?もちろん、「そう思う」というのは事実なのだろう。しかし、ご紹介したグラフを見れば、センター試験で抑制を行っていないことが明らかな訳で、「早大志望が強い生徒優遇」ではないと言える。

私立大学が真摯に人材育成を考え、独自の教育や研究を行いたいのであれば、どの大学の説明会も全く同じ「グローバル×キャリア×英語」という発信にはならないはずである。

大学も辛いことは分かる。お上は札束で言うことを聞かせようとしているのだから。こんな品のない教育行政には反吐が出る。文科省などない方がよいとさえ思えてくる。

しかし、だからと言ってやられっぱなしでは困る。                      こうした行政の気まぐれ政策の影響を最も強く受けるのは学生なのだ。            生まれた年が1、2年違うだけで全く異なるハードルを課されるのではたまったものではない。もちろん、いつの時代にも順風、逆風はある。しかし、今回の文科省の政策による影響はこれまでとは異質で異次元のものである。2020年の教育改革とやらも、恐らく大きな痛みを子ども達に強いることになるだろうが、子ども達が生身の人間であることを忘れてはならない!

 

 

 

 

 

 

 

 

平成29年度試行調査問題、国語記述問題について

前回、本ブログでも取り上げたサンプル問題と比較すると
今回の記述問題の課題文は高校生の日常から離れたものではなく
その点では改善されたと言える。
(前回は街の景観問題・駐車場契約などが題材)

http://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00011239.pdf&n=5-01_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E5%9B%BD%E8%AA%9E.pdf

ただ、問題を実際に解いてみると記述問題として思考力・表現力を
測定するに足るものとは到底思えないし、それ以前に問題として最低限
必要な質を確保しているとも言いがたい、というのが私の印象である。

以下、僭越ではあるが分析してみたい。

【問1】
当該年度に部を新設するために必要な、申請時の条件と手続き を50字以内で答えさせる問題

解法としては冒頭の「青原高等学校 生徒会部活動規約」が解答の材料となる。

この規約にある文言を可能な限り抜き出すと

同好会として3年以上活動し、当該年度の4月第2週までに、所定の様式に必要事項を記 入し、生徒会部活動委員会に提出すること。(60字)

となってしまう。制限字数を10字オーバーする訳である。

模範解答は
同好会として3年以上活動した上で、4月第2週までに所定の様式で生徒会部活動委員会に申請すること。(48字)

となっている。模範解答を分析すると、抜き出しからどのように字数を減らしているかが分かる。

1)活動し     → 活動した上で (+3字)
2)所定の様式に必要事項を記入し  → 所定の様式で (-8字)
3)当該年度の   → カット  (-5字)
4)提出       → 申請  (±0字)
5)読点    → 2箇所カット  (-2字)

東京大学英語の要約問題では、本文を抜き出してそのまま日本語にまとめると制限字数を遥かに超える。
よって、「言葉の圧縮力」が必要となり、そこに「表現力」を試す要素があるのだが、
上記の5点の言葉の「削除」に、個人的には何の「思考力」も感じられない。
特に5)の読点を省略するというのも、「それアリ?」と感じてしまう。

そもそも、「表現力」とうたいながら、解答者が行うのは基本、「抜き出し」に過ぎない。
これが「記述力」と言えるのか、大いに疑問である。

【問3】 空欄(イ)について、ここで森さんは何と述べたと考えられるか、次の(1)~(4)を
満たすように書け。

こちらの問題は、問題として成立していないように思えるが、どうだろうか?

簡単に問題までの流れをまとめると、「部活動の終了時間延長」についての提案をテーマに

生徒1 賛成。個人的にも作品展の前は時間が不足するから。
生徒2 賛成。いつもライバル校にあと一歩で勝てないから。
生徒3 賛成。個人的な思いだけでは提案出来ない。資料はないか?
生徒4 資料②を提示(市内5校の部活動終了時間のまとめ)
生徒5 資料③を提示(新聞部の昨年度の記事)
生徒3 では、資料②と資料③を基に提案を呼びかける。
生徒5 ちょっと待って下さい。提案の方向性はいいと思うのですが、課題もあると思います。(空所イ)
生徒3 なるほど、そう判断される可能性がありますね。では、どう提案するか皆で考えましょう。

問題の詳細はリンク先の問題で確認していただくとして、流れとしては

生徒1.2の個人的Opinion → 生徒3がFactが提案に必要と提案 → 生徒4・5から資料提供

ここまでは自然な流れ。その後、「生徒3が資料②③を基に提案を呼びかけましょう」とまとめるがここで予想されるのは、資料②③をFactとして使いながら、具体的な提案を練っていく流れだが、生徒5はなぜ、「ちょっと待って下さい」と言ったのかが謎である。

恐らく出題者は、「生徒が有利になるはずの資料③の中に、下校時安全確保が延長を認めない根拠だとする教員の意見があり、有利なことばかりではないから、それをどうするか検討しよう」という呼びかけとして発言を作成したのだと思うが、生徒3がFactが根拠であることの必要性を解き、具体的資料が2名から出された後なので、全員がFactを重視して議論するのが自然な流れである。

それを、資料を提供した自分自身が、その流れを断絶し、口を挟むのはどうなのだろう?

そもそも、資料③には突っ込みどころ満載である。

複数回答可とした、「青原高校に求めるもの」の%を全て足すと100%になる。
これ、本当にちゃんとしたアンケートなの?と疑いたくなる。
また、「部活動充実」を求めるとした52.5%(複数回答可なのでMax値)のうち
71.6%が「終了時間の延長」を求めているということは、全校生徒の中で「終了時間延長
を求めている生徒」の割合は37.53%となる。この数値は、「終了時間の延長を求めない
生徒(現状維持・時間短縮を求める生徒)」が相当存在することを必ずしも表してはいないが
過半数には遠く及ばない数値である以上、説得力に欠けるデータと見られる危険性がある。

そう考えて解答を作ろうとしても、出題者の課す条件から、出題者自身が資料の読み取り能力などには関心がないことを忖度して、不自然な流れの会話を資料②と③から作成するしかなくなる。

そもそも、3問ある記述問題のレベルは、恐らく優秀な生徒であれば小学生から中学生初期程度で対応可能だと思えるのだが・・・。

今回のブログでは扱わないが、第2問、第3問の正解とされる各選択肢にも突っ込みどころ満載である。
ただ、こちらは従来のセンター試験レベルよりは、題材は難しいと感じる受験生も多い可能性がある。

このレベルのちぐはぐさも含め、記述問題の開発にはまだまだ課題が多いと思わざるを得ない。

私の意見は従来どおりの試験に戻せということではない。

「受験生に失礼のないものが用意できてから出すべきだ」

と考える。

解答を公表出来ない無責任な対応を続けている各大学の入試問題にも是非メスを入れて欲しい。

そうした改善も行われないまま、見切り発車を行うなら、受験生の受ける被害は多大である!
それだけは絶対に避けてもらいたい!

 

 

 

アクティヴラーニングを考える 日テレドラマ 「先に生まれただけの僕」第3話を材料に

櫻井翔さん主演の日テレドラマ「先に生まれただけの僕」の中で「アクティヴラーニング」や “Instructional Design”が紹介されていて興味深く視聴させて貰った。

http://www.ntv.co.jp/sakiboku/index.html

私の感想の結論は、

表面的過ぎる内容でAL(アクティヴラーニング)に対する誤解が広がるので、
どうせドラマで取り上げるなら、きちんと取材なり勉強してからにして欲しい。

ということになる。

が、全否定するわけではなく、何が問題点なのかを考えることが有意義だと
感じたので取り上げてみたいと思う。

まずドラマ第3話の中でALにまつわる話の概要は以下の通り。

① 急な退職者が出て、臨時で授業補填をする素人校長の鳴海校長(櫻井翔さん)がALを
数学の授業で実践。「教えるのではなく生徒自身が教え合う」授業運営を試みるが
「全員問題解答」という目標には到達出来ず、失敗したと校長は落ち込む。

② 瀬戸康史さんが演じる英語教師が、「アクティヴラーニング」には必要な方法論があり
それは Instructional Design であるとし、以下の③のような授業を展開する。

③ 二枚の絵を使ったPair Work。There is ~ / There are ~ の文を用いて二人で
英語のやり取りをしながら、お互いに絵の違いを発見していくという活動。

④ 生徒は「授業が楽しかった」と言い、でも「AIが発達して通訳が瞬時に出来る時代が来るのに何故英語を学ばなければならないのか?」という疑問を英語教師にぶつける。

⑤ 少子高齢化、労働人口減少などの要因で日本のグローバル化は避けられず、ネット情報の半数が英語という時代。将来の日本人にとって英語は重要な「生きる力」の1つだと教員は答える。

実は、私自身、田原真人さんが主宰する「反転授業の研究(フェイスブック)」の末席に
加えて頂いている身である。田原さんのように、ALに対して幅広い教養も知識もないが
それでも、ドラマでの扱われ方には深刻な課題が多いように感じた。

まず、①の櫻井校長のAL授業。素人がネット検索から一夜漬けした程度で出来る授業としては
実にリアルに描かれていたように思う。これなら誰でも出来るレベルだ。
だが、当然失敗する・・・。が、本当に失敗なのか?

教員が設定した「目標」に生徒が到達しないことを「失敗」と断じてしまうのは
方法論がどんなものであっても、正しい認識ではない。
教員、生徒両方が「設定目標」に到達しない挫折だって、貴重な「経験」である。
また、「授業」の成功を、「単発の授業の目標到達」で評価することも安易であろう。

ここでは、むしろ、「授業で設定した目標」の妥当性を課題にすべきだったと思う。
「1問解ける=ゴール」という目標設定自体が悪いのではなく、その授業のゴールが
何に繋がっているのかが学習者、教育者に共有されていないことが問題。
だからこそ、最後に生まれる生徒側の疑問、「これが出来て何になるの?」は
必然だと感じた。その疑問の必然性と授業との繋がりこそ本質として描くべきだったのでは?

次に②③の Instructional Design を土台にしたという瀬戸さんの授業について。

③の授業は、中学1年生の英語授業の中で私自身が行ったことがあるもの。
珍しい活動ではなく、準備も実践も簡単だ。
ま、少なくとも、高校2年生の英語授業ではありえない、といったツッコミは置いといて
あれは、ただの「活動」であり、それだけでは「学び」とは言えない。
だから、Active Learningと呼べる代物ではない。
あれをActive Learningだと解釈する誤解が保護者、教員、社会全体に
広がれば、ちょっと大げさだが、日本の教育は崩壊しかねない。

今の生徒たちの中には、「人の話を聞く」のが本当に苦手な生徒が少なくない。
瀬戸さんが演じた授業は、「学問において致命的とも言える人の話を聞けないという欠点を抱えた生徒を寝かせない方法」
であり、あれをActive Learning として広めていくのなら、日本中で「活動あって学びなし」
(元堀川高校校長荒瀬先生の言葉)の授業が蔓延することになるだろう。

何が問題なのか?実はそれを考えることが、ALについての考察を深めることに繋がると考える。

Instructional Design について、私は専門的に学んだことはないが
簡単に言えば、「生徒がActive Learner になる仕掛け」のことだと解釈している。

瀬戸さんの演じた授業の問題点だと私が感じたのは以下の通り。

1)授業の目標設定が明確ではない

⇒ だから最後に「楽しかったけど、何のためにやってるの?」と問われる
2)学習者が目標到達したかどうかの確認がない

⇒ たとえ出鱈目な英語をずっと使っていても修正の機会すらない
3)単発の授業が次の授業とどう繋がるかが見えない

もちろん、日々行っている私自身の授業も欠陥だらけである。
私自身を含む多くの教員が抱える課題とここで挙げた課題は重なるところがあり、
その点については後述するが、ここでは瀬戸さんの演じた授業についてのみ話を進めてみる。

瀬戸さん演じる教員は少なくとも以下の点をまず生徒と共有して授業すべきであった。

□ 活動が、「情報のギャップ」を埋める意思疎通に必要な伝達スキルを鍛える訓練であること。
□ 多少間違った英語でも、英語を発話する機会を持つことが重要であること。
□ 共有するバックグラウンドが大きく、「ギャップ」が極めて小さい同級生にすら伝わらないのであれば、共有するバックグラウンドが小さく、「ギャップ」が大きい外国人との会話では伝わらない。語学力、伝達力に大きな欠陥があることを確認し、それを具体的に改善することが必要であること。

もちろん、上記のような言葉では伝わらないので、そこにも工夫が必要である。

そして、授業でのやり取りを録音するなどして教材化し、何が間違っているのか、伝達法のどこに問題があるのかを明確にして「学び」に繋げることこそが必要である。「やりっぱなし」の授業では、「学び」にはならない。

ここで、現場の課題も明確になる。

仮にフィードバックを実施するなら、一人の会話が3分だとしても、20組(40人クラス)だとそれだけで60分となり聞くだけで1時間が終わってしまう。7組(14人クラス)だと21分。これらを同一授業内で消化するのか、次の授業の教材として活用するのかによるが、フィードバックを実施するなら、これがギリギリの人数だと思う。

イギリスでのTeacher Training プログラムに参加した時、ドイツ、ラトビア、ポーランドなど多くの英語教員と情報交換したが語学の授業で40名を超えるクラスサイズだという日本の現状を話すと、例外なく「信じられない」というリアクションが返ってきた。

また、こうしたフィードバックを含めた授業デザインを実行するには、学期ごとの到達目標などといった大雑把な計画では実行不可能だ。しかし現状、私自身出来ていない。

「ブラック企業化」した、「非本来業務」や「不毛な会議」が増加する現在の学校現場では、可能なのは一部の学校の一部の教員に限られるだろう。ALを叫ぶ教育行政側にその問題意識があるとは思えないのが残念であり大きな問題である。ここを課題として大きく取り上げて欲しかった。ま、ドラマではなくなってしまいますし、ますます視聴率も落ちそうですけどどね(笑)。

さて最後に、④⑤のやり取りについて。
お気づきになった方も多いかもしれませんが
瀬戸先生、全く生徒の質問に答えていません(笑)。

生徒「AIが瞬時に通訳する時代が来るのに何故英語を学ばなければいけないの?」
先生「少子高齢化、労働人口減少、移民増加が必然の時代。ネットの半数の情報も英語。だから学ばないといけない」

先生の答えがトンチンカンであることも問題だが、それより問題なのは
「学ぶ理由が分からない時には学ばなくてもよい」という前提に立って話を
している点で生徒と先生が同じ土俵に立ってしまっている点。

「解なき時代」と言われる時代に教育は変わらなければならないと語る教育関係者は多いが
「解なき時代」なら(いや今だけでなく昔からそうだが)、「何故学ぶのか?」の解など
どこにもないことこそ伝えておかなければならないのではないか?。

「そんなこと私にも分からない。その答えは私も君たちも自分で創るんだ。甘えるな!」

それだけで良かったと私は思う。

ちなみに、瀬戸先生の解答は、近年教育行政に口を出している「経済界の言い分」そのものであり、そこにもぞっとする気持ち悪さを私自身は感じてしまった。

だから、入試問題がSPI化することに何の問題も感じない教育関係者が多いのだろう。

いずれにしても、ただのドラマのエピソードだったが、私としては考える材料を提供して貰えたことに感謝したい。

最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。