昨日、聖心女子大学で行われた未来の先生展2018で
ESN英語教育総合研究会から発表させて頂きました。

お忙しい中、拙い発表をお聴き下さった方々、支えて下さった久保先生、高瀬先生、大久保先生、ネリーズの皆様、ボランティアの学生の皆様、本当にありがとうございました。

以下、概要ですが、内容をご紹介させて頂きます。

ミニ講演のテーマは以下の2つ。

【01】 民間4技能試験導入に現場はどう対応すべきか?
【02】 授業の「進化」を目指して(LT/CT/Ed tech活用等)

ワークショップを予定していた内容は

Income Inequality Explained: The Effects of Globalization ― Learn Liberty
(https://youtu.be/ja15pIDBEHc)

という178語の英文題材(元々は動画)を用いて、今年の未来の先生展のテーマである、リストラクチャリングをテーマに、「従来型の授業」をどう再構築し進化させるか、を参加者とともに考えるというものです。

当日初めて教室を拝見し、

ワークショップへの短時間での環境変化が難しいこと

当日の参加者数が始まってみないと分からないこと

などから、ミニ講演の後、私や高瀬先生の教育実践を先にご紹介し残り時間で、参加者それぞれに意見交換をして頂くという中途半端なワークショップ(とは言えないもの)になってしまった点が反省点です。

<ミニ講演内容>

大半が3月の講演内容と重複しますが、新たに分析や考察の結果としてご紹介したのは以下の通りです。

【01】 民間4技能試験導入に現場はどう対応すべきか?

□ GTEC Readingの課題 :広告問題に文字数が多くLiteracyの問題になっていない。
□ GTEC Listeningの課題 :選択肢を読み上げることで集団受験時に答えが分かってしまう可能性がある。

□ 2018.5.13の上智大説明会でのTEAP相関についての発信と私の相関分析の比較: 一致しているが、上智はRLとWSの相関など少し大雑把だと思うのでもう少し詳しく知りたい。
□ 2018.5.13の上智大説明会でのTEAP相関についての考察:「TEAPスコアと合否の相関はない」

上智のTEAP入試ではTEAPスコアを得点として換算しないため、国社数理で合否が決まる、ということだが、この発信が意味するものは、それだけではない。なぜなら、上智のTEAP入試の国社数理は「LT/CT/表現力」を重視した試験。ということはTEAPと「思考力・表現力」の間に相関はないことになるのではないか?
TEAPはCEFRによって設計されている。ということは、CEFRと「思考力・表現力」の間に相関がないことになる。
ブルームのタキソノミーを下地に、文科省発信の学力3要素とCEFRを重ねたモデルの発信が多いが、そこには全くエビデンスが存在しないということになる。

ブルームのLOTS(remember/understand/apply)=文科省の「知識・技能」=CEFRのA1~B1

ブルームのHOTS(analyze/evaluate) =文科省の「思考力・判断力・表現力」=CEFRのB2~C1

ブルームのHOTS(create:最上位) =文科省の「主体性・多様性・協働性」=CEFRのC2

春の研究会では、ブルームが最上位に置くcreateを文科省が「主体性・多様性・協働性」と対応させているいびつさ、気持ち悪さ、危なさを指摘しました。

今回は上智の発信から、CEFRとの対応が全く根拠のないものだと言える点を指摘させて頂きました。

□ 4技能試験導入の影響について

(プラス面)  WSも試験で問われることで、授業や生徒の学びの意識が変わる。

確かに、そういうプラス面は期待できなくもないが、マイナスの影響の方がはるかに大きいと考えられる。 なぜなら、民間4技能試験のWSには課題があまりに大きすぎることが相関分析から明らかなためだ。

(マイナス面)
SpeakingはListeningと異常な相関にあることから、相手の言うことを聞けなくてもOKのSpeaking。短期対策で十分。普段の授業で行われているOral 活動などのモチベーションに悪影響。

Writingでは論理はどうでよもいということに。GTECで80%前後の得点を貰っている答案の
LT面でのひどさを実例として紹介。(これは春にもやりましたが、より詳しくご紹介しました)

Reading面では、「Aに基づきBを設定し、Bを達成するCを実行する」=「BとCに基づくAを持つ」と解釈してしまう多くの生徒の論理思考不足を実例として紹介。(6月の授業内容なので春の発表にはなし)

4技能試験対策ではなく、LT/CTを重視した学びを目指して授業も生徒の学習も指導することが必要だという結論は春の研究会の時と変わりません。

□ 日本の英語教育の真の課題について

「日本の英語教育は中高6年、大学まで入れると10年やってものにならない酷いもの」
「日本の英語教育はフィリピン以下だ」

こういった感情的でヒステリックな発信が、エビデンスに基づかない低次元の発信であると同時にいかに子ども達に悪い影響を及ぼすのか、という個人的な問題意識を紹介しました。

資料として用いたのは、語学学校のHPで公開されている科学的調査の結果です。
(http://www.etn.co.jp/approach/period.html)

第二言語習得を専門に勉強した人たちなら当たり前に知っていることですが外国語の習得の難易度は、言語間の距離によって変わります。

アメリカ国務省のデータによると、英語が母語であるエリートに必要とされる研修時間はフランス語が480時間、日本語は2700時間。日本の中高生が6年で英語学習に費やす時間は平均1500時間前後。

別の調査では、カナダのフランス語が母語の学習者が英語を身につけるには最低2100時間必要。第二次世界大戦前のアメリカ海軍の日本語研修時間は4200時間(それで沖縄戦で聞かれる程度のカタカナ日本語)。スペイン系不法移民がなんとか仕事で使える英語を身につけるのに要する時間が6000時間(それも60%の到達者)。

留学もホームステイもしない中高生なら、英語の時間数が多い学生でも2000時間程度。   これを無理に引き上げようとすれば、中高生の日常は滅茶苦茶にされてしまう。

量が絶対的に不足している人に、「君は被害者だ。方法論が悪い」「そんなに勉強しても出来ないの?」という発信をすればどうなるか?

8年たたないと実がならない柿の木を3年で切るような乱暴な発信を、「正義」だと勘違いして感情的に発信するのはいかがなものか?(当日はここまできつく言ってませんが(笑))

目指すべきは、習得に必要とされる大量の学習時間を少しでも効率化する具体的な方法論やツールの導入を様々な学問の知見を生かして広め実行することや、外国語に触れる環境をどう整備するのかを検討し改善することでありテストの変更や従来の方法論の全否定ではないのではないか? と訴えました。

そもそも、ヒステリックな大人が多いのであれば、思考力育成なんてこの国では1000年たっても出来ません。(これも当日はここまで言ってないですが)

※ この話題は、研究会の山田先生、高瀬先生、cotobankの小泉さんとお話した時、上智大の元ゼミ友や現在留学中の緒方先生、小学生と大学生に英語を教えておられる山之内先生との意見交換がとても参考になりました。ありがとうございます。

【02】 授業の「進化」を目指して(LT/CT/Ed tech活用等)

2018.6経済産業省の提言の前提となっている仮説: Ed techにより学習の個別最適化が実現する について

Mikan(Z会)、Targetの友(旺文社)など、テクノロジーの進化は目ざましく、個人的にも「こんなものが自分の学生時代にあったらよかった」と思う。その点では、この仮説は正しいと思うが、見落としている点が2点、といのが私の個人的見解。

① 教科書・ノート・鉛筆 がタブレットに変われば子どもは勉強するのか? (そんなわけない)
② Ed techの大半が、個別最適化という設計になっている点こそが大きな弱点になる可能性がある

4技能試験の課題の本質が、4技能を別のものと仮定し、それぞれを個別に測定可能としている仮説の危うさにあるのと同様、学習の個別最適化実現が正しい方向性でも、そのためのツールが授業、授業内活動評価、発展学習と切り離されることによって、大半の生徒が取り組まなくなるというジレンマに陥る可能性が高い、いうことを、自作のHP教材、RPG教材、AI教材、ビデオ教材、Eメール添削などの限界を痛感した経験から指摘させて頂きました。

実は、AIの強みと弱点、人間の強みと弱点を理解し、AIと人間の役割分担によって教育効果を上げようとしている塾もあるようです。この発想は個人的に凄いと思います。(発表では触れる余裕がなかったです)

私が提案したのは、このブログで発信させて頂いたAIの活用法なので、ここでは省略させて頂きます。

LT/CT教育強化の実例としては、私が本年度使い始めている作文の教材のご紹介(ロジカルレーダーを用いた作文教材やLogical Fallacyをテーマにした自由英作文教材)させて頂きました。

【03】従来型授業のリストラクチャリング実践

ワークショップを予定していましたが、教室環境と時間の都合で一方的なこちらからの発信になってしまいました。楽しみにして下さっていた方々には本当に申し訳ありません。

高瀬先生とコトバンク社の音読におけるICT活用の画期的な点が「評価と活動の連動」にあることをご紹介。

私からは、読解授業で用いている、「Fact Opinion」の2分法を進化させた、「Fact / Untested claim/ Opinion / False claim」の4分法と、私の「6つの論理」という論理思考訓練をはるかに超える、野矢茂樹先生の「7つの論理」のご紹介をさせて頂きました。

Fact / Opinionの2分法の課題と限界から4分法を用いることで論理思考や批判思考の訓練を活性化出来るのではないか、という発信です。特に、Untested claim (Auburn Universityからも発信)を考えさせることで、Text内では真偽が判断出来ない文の真偽をText外に求めることを誘導出来るので、発展学習に向いているのではないかと手応えを感じています。

また、権威主義的な教科書が子ども達の思考の成長をかえって阻害しているという問題を指摘し、教科書=権威・神ではなく、教科書=出発点 という視点で教科書を作ることが必要ではないかと問題提起しました。

さらに、語彙・音声・文法の学習が4技能訓練の授業活動の中で連動していない点も改善が必要だと指摘させて頂きました。
【結論】
未来の先生展の台風のようなロゴ  = 停滞した教育界に大きな変化を
Teacher’s Laboさんの4つのピースが連結しているロゴ = 連結しないピースはいかに優れていても機能しない(Ed techの課題など)
ESN英語教育研究会の人の繋がりを用いたロゴ = 人の繋がりこそが課題解決の最大の鍵
拙い発表を最後までお聴き下さった全ての方々、ご支援、ご協力を頂いた研究会の先生方、同僚の先生方、ボランティアの学生の方々、ご支援頂いた企業の方々、全ての方々に心から感謝申し上げます。

今回のご縁をきっかけに、「繋がり」を育てていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。

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