現行のセンター試験に代わる英語のサンプル問題が公表されたので
リスニングと読解問題を解いてみました。

3/29の研究会の発表では、この問題についての分析は触れないので
ここにまとめておきたいと思います。

私は大学入試センターという団体を肯定的には見ていませんが(笑)
民間の英語試験のReading / Listeningよりもはるかに良質な問題だと
判断します。

移行期間限定ではもったいないので、是非民間試験導入ではなく
Reading / Listeningはセンター試験で実施してもらうことを望みます。

□ Listening Version A (Version BはA(20問)+10問)

<概要>

2018年1月実施のセンター試験リスニングは難化したが、そのベクトルで問題を難しくしようという意図はないと感じた。
あくまで、「知識 < 考える力」を意識し工夫した問題が目立つ。難易度は決して高くないが、センター試験のリスニング問題としては、従来のものよりは更に良くなったと個人的には感じる。
GTECのリスニングでは、選択肢英文を読み上げるため、大会場では、他の受験生が鉛筆を持ったりマークしたりする気配や音で「集団カンニング」に近いことが起きてしまう(個人で何回か指摘したが改善されてない)が今回の問題ではそういう素人的な穴も見当たらない。
導入候補となっている多くの民間検定試験より、今回の問題の方が難易度も質も備えた問題で、はるかに良問であるというのが解いた後の私の印象である。

<設問別分析>
【第1問】
A(3問) 放送される英語と近い意味の英文を選択する問題。
⇒ 文法的な知識や音の聞き分けではなく、状況を把握する能力を試す問題。

B(2問) 放送される英語の内容を表した絵を選択する問題。
⇒ 基本的な文法知識がないと文意を正確に取れないので知識を聞いている問題。

【第2問】3問:放送される対話の内容を表す絵や地図内の場所を選択する問題。
⇒ description(描写)表現や位置関係表現が基本的な英語が分かっていれば基本的な問題。

【第3問】 3問:対話を聞いて内容に関する質問に答える問題。
⇒ 対話の内容が分かれば、そのまま答えられる問題ばかり。「聞こえた英語」をそのまま答えるレベルの学生でなければ、理解出来る程度の問題。

【第4問】 1問:4名の英語を聞き、「経験・英語力・スケジュール」の3つの条件を満たす人を選ぶ問題。
⇒ 「思考力問題」としては基礎レベルだが、これまでのセンター試験にはないタイプの問題。情報の整理に表を使わせるのはLogical 系問題としては定番だが良問だと思う。

【第5問】 4問:環境問題をテーマにした問題「服とゴミ・エネルギーの関係」
⇒ ワークシートを完成させ講義のSummaryを作成させる問題は東京外大と同一形式(レベルは外大より易)知識があれば英語を聞かなくても完成出来なくないが、逆に常識レベルの知識がなければ何を言っているのか分からない生徒もいるかもしれない。また、講義の内容では直接触れられていない話者の主張をinferして答えさせる問題、グラフと内容の一致を問う思考力系問題も1問ある。

【第6問】
A(2問):修学旅行についての2人の大学生の対話。
⇒ 2問ともWhat is the man’s(woman’s) main point? 式の概略を問う問題であるが、実際には各選択肢の内容が話と矛盾しないかどうかを消去法で解くタイプの問題。情報処理系の問題。

B(2問):「炭水化物を積極的に摂取するかどうか」をテーマにした問題
⇒ 「すべて選びなさい」という形式の問題。「新しい試み」と最近よく話題になるが、早稲田・教育の入試英語では1980年代からこうした形式はあった。一歩間違うと悪問になりかねない形式だが、今回の出題は見事。
⇒ 1問目は「それぞれの話者の発言内容が、炭水化物積極摂取に賛成か反対か」を焦点に聞かせる問題。2問目は話者の話している内容が「グラフ」と合うかどうかを聞く問題。不正解の3つが簡単に見分けられるのでグラフ問題としてはもう少し工夫が欲しいところ。

□ 読解問題

<概要>

テーマパークやぐるナビに似たサイト情報が題材になっていることが目新しさを感じさせることは確かである。
海外滞在中に必要なReading力が「アカデミックな英文」ではなく「標識」「説明書」「薬などの服用における注意」「観光地やレストランに関するガイドブックやネットの情報」であることを考えると、2020年の教育改革のテーマになっている「日常から出発する学び(日常が終点ではない)」に合う問題だと思われる。(あくまで私的解釈である)
ただ、解答に必要な能力を分析してみると、「スキャニング能力+消去法を用いることが出来る読解力」である点がそれほど変わっていない問題も多い。全てを思考力型にする必要もないのでバランスが肝心だが、概ね良いバランスであるように思う。
他でも発信があるので詳細は省くが、音声問題、文法問題、整序問題などは消えた。
これも方向性としては正しいコンセプトだと私は考える。
ただ、知識系の問題にしか対応出来ない生徒が具体的な学習内容を見失う影響は心配される材料。単語テストや文法・構文のミニテストを日常レベルの学習で課している学校も多いだろうが、重箱の隅を突く問題を聞くような教育が減るのは歓迎だろうが、「試験に出ない」という理由で勉強しなくなる子へのケアーが必要になる。
また深い知識がなくても表面的な情報処理で対応出来る問題が多い。思考力系問題にチャレンジしているのは素晴らしいし、民間試験の多くをはるかに超える良問だと私は感じるが、得てしてこの手の問題になると生徒の日々の地道な努力より元々の生徒地頭や読解力が大きく点数を左右することが多い。
この点についても、現場の教育が「試験対策」ではなく「思考力とともに知識の重要性」をどこまで強調出来るかが課題になると感じた。

<設問別分析>
【第1問】
A:2問 海外の遊園地のWebページを情報源にした情報処理系の問題
⇒ 解答に必要な本文該当箇所をスキャニングし消去法で処理出来る問題。従来型センター試験では表や図に根拠がある問題が多かったが、2問とも英文情報がスキャニング対象となっている。

B:3問 大学のポスターを情報源にした情報処理系の問題
⇒ ポスター内の情報を統合して内容を確認させる問題の出題も1問あるが、従来型センター試験と同様に情報処理能力を見る問題が2問。

【第2問】
A:4問 ぐるナビのようなサイトの情報を題材にした読解問題
⇒ それぞれの料理店についてのコメントと合うものをスキャニングし消去すれば確実に正解できる問題が2問。複数あるコメントを総括するとどう言えるかを問う思考力型問題(超易)が1問。Fact か Opinionかを問う問題で複数解答方式だが、狙いは思考力問題として非常に良い。しかし、正解を見ると、こうした出題では細心の注意が必要であることを改めて感じさせられる。

 

1  Annie’s Kitchen offers dishes from many countries.       manyよりopinion
2  Johnny’s Hutt is less crowded than Shiro’s Ramen.   dataがないので判断出来ない
3  Johnny’s Hutt serves some fish dishes.    書き込みよりfactと判断出来る
4  The chef at Johnny’s Hutt is good at his job.   goodよりopinion
5  The chef ’s meal-of-the-day is the best at Annie’s Kitchen. the bestよりopinion
6  The menu at Annie’s Kitchen is wonderful.    wonderfulよりopinion

これで正解が1,3となっている。そもそも、Fact/Opinionの判別問題であるにも関わらず、論拠を書き込み(opinion)にしている点も作問として問題である。1をFactとする根拠を The menu is 13 wonderful pages long with food from around the world.に求められる、とするのは無理がある。ただ、検定試験には見られないこうした出題形式は狙いは非常によいので、慎重に作問をして貰えれば良問になるはずの問題である。

B:5問 ディベートの準備をする学生の立場に立ってボランティアについての記事を読ませる問題
⇒ 5問とも単純な情報処理ではなく、本文に書かれていることを基に考えさせる工夫が見られる問題。アンケート結果から質問を考える問題が1問、賛成反対の立場の生徒が活用出来る箇所を答えさせる問題が各1問。本文の内容を確認する問題でありながら、きちんと抽象表現が読めていないと具体が見えない問題が1問。筆者のスタンスを聞く問題(Critical Thinkingレベル)が1問。難問はないが、思考力をきちんと問う良問。

【第3問】

A:2問 題材はブログ。ただ、従来のセンター試験と大きく変わる問題ではない。
⇒ 場所情報、内容一致不一致をスキャニングと消去法で処理させる情報処理系の問題。

B:3問  セールスマンによる新聞の投稿記事。「機械が人間の労働を奪う」という最近よく見られるトピック
⇒ Time/Space Orderに関するLogical Thinkingレベルの問題が1問。内容一致不一致に関する情報処理系の問題が2問。

【第4問】5問: ボランティア活動についてのグラフと2人のレポートが題材。
⇒ 内容に関する情報処理系問題が4問。タイトルから2人のボランティア普及活動に役立つ記事を推測させる問題(Critical Thinkingレベル)が1問。バランス的には情報処理系が多いので、もう少し思考力型問題が欲しい。

【第5問】
A:3問 折り紙についてアメリカ人学生が書いた英文を編集者の立場として読む設定の読解問題。
⇒ 全体の要旨を問う問題が1問、筆者のintentionを聞くCritical Thinkingレベルの問題が1問、従来のセンターやTOEFLiBTで見られる文章の空所補充(Logical Thinkingレベルの問題)が1問。バランスも題材も素晴らしい。

B:6問 黒胡椒、白胡椒の違いと効能について(アウトラインの完成)
⇒ Outline / Compare & Contrast作成/ 要点まとめ というLogical & Critical Readingをさせる問題。難易度は高くないが、日頃からReading Strategyを意識した読解の学習をしていない学生には厳しいかもしれない。Reading PowerやNew Treasure のような教材で学んでいれば、容易に対応出来るはず。複数解答の問題が2問あるが、きちんと読めば迷うことはないと思われる。

【第6問】5問:物語作品のReviewを書く設定で物語文を読ませ、アウトライン、登場人物、自分の意見などを完成させる問題。
⇒ Outlineの空所補充が2問、登場人物の気持ちを選択させる問題が1問、意見を完成させる問題が1問、どんな人にお勧めかを判断させる問題(Critial Thinkingレベル)が1問。

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