今年の私大入試の結果を見て、同僚のKim先生が、
「今年、例年より大学が発表する合格者数少なくない?」
という感想を漏らしていました。

私としては6カ年担当した学年の子達が全て第一志望に合格して欲しいとは
思いますが、それなりに各受験生の弱点も知っているし、本校の場合今年は
例年よりも合格者を増やしている大学も多いので、そうかなぁ?落ちる子は
それぞれ不十分なところもあるんじゃないという程度の認識でした。

でも、どうやら私の印象より、Kim先生の感想の方が正しいようです。

□ 受験生に悲報…有名私大、約3千人の合格者削減?より狭き門に
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11038.html

□ 大学の定員超過抑制のため、私学助成不交付基準を厳格化
http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2015/09/post-6.html

すみません。知りませんでした。
(Kim先生も知らかったようですが、感覚で異変に気付くのはさすが)

詳しい記事の内容は上記の記事をご覧いただくとして、要約すると以下の2点です。

① 例年定員超過して学生を入学させている大学が多い現状を改善するため
私学助成金不交付基準を厳しくする。

② 多くの人気の私大が入学許可数を抑制するため合格者数を減らす。

この方策は2016年度、つまり現高校3年生から適用するとのことです。

今年やたらと補欠が多い理由も、これが原因だったんですね。
受験生からしたら、突然の災難。寝耳に水ですね。

もちろん、ボーダーラインなどにかからずに、余裕をもって合格出来る学力をつけるのが
受験生としての王道ですが、「どこを受けても合格出来る」タイプの生徒は
例年、本校でもそれほど多くいる訳ではありません。

超進学校の上位生徒はあまり影響を受けないでしょうが、ボーダー周辺の多くの
学生にとっては大きな変化でしょう。

ちなみに昨年度の有名私大の定員超過率は以下の通りです。

トップクラス私大の直近総定員超過率

早稲田大学119%、立教大学119%、
青山学院大学116%、上智大学116%、
明治大学114%、立命館大学114%、中央大学114%、
同志社大学113%、慶應義塾大学111%、
関西大学110%、
法政大学107%、
関西学院大学105%

ご存じだった先生方も多くいらっしゃると思いますし、本校でも数名ほど2月のニュースで
知ったという方もいらっしゃいました。

ただ、私はこのニュースを知って、すごく「嫌な気持ち」と「怒り」を持ちました。

なぜ、文科省はこんな施策をとったのでしょうか?

先ほどご紹介した記事にこうあります。

首都圏の大規模大学関係者が「痛いところをいきなり突かれました」と語るように、該当する私大側も動揺を隠せないようだ。もともと関係者の間では、大規模な私立大学が定員を上回る学生を入学させていることは、よく知られていた。自治が広く認められている私立で、学生の受け入れ数は裁量の範囲内であること、また行き場を失う受験生を少しでも減らしたいという温情もあって、これまで黙認されてきたとみられる。ただ、現状を考えると弊害が大きくなっているのも事実だ。周知の通り、少子化を無視した大学の乱立に伴って、ブランド大学と無名大学の格差は著しく拡大してしまっている。
文科省の狙いは、投網を打つようにして受験生をさらっていく大都市部のマンモス私大、すなわち有力私大の膨張を抑止しようとするものであろう。ゆとり教育の蹉跌に始まり、最近では新国立競技場の巨額建設費問題まで失策続きの文科省だが、今回の補助金抑制策は一定の妥当性がある。

私はこの記事の言っていることもある程度理解出来ますが、「一定の妥当性がある」とは
まったく思いません。何故か?

まず、「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)  海老原 嗣生著 の中でも述べられていますが
少子化ではあるものの、大学進学率は1980年代の25%程度から現在では50%を軽く超えており
大学も新設学部もドンドン出来ています。当然、大学の質の低下が起こります。

こうした状況の中で、大学の品質保証を実現したいのであれば、
本来やるべきことは、「大学の名に値しない大学を一つでもつぶすこと」であって
上位校の門戸を狭めて、下位の大学にも学生がいきわたるようにすることではないはずです。

理由として妥当性があるとすれば、上位大学の質の維持と教育条件の厳守でしょう。
早慶を中心とする首都圏の大学は、首都圏学生占有率の上昇、新設学部増加、浪人生の減少などから
ピーク時よりも確実にレベルダウンしています。

プロ野球でも1リーグ制が議論されましたが、大学のレベル維持をするなら
定員を絞るという策は1つの選択肢として議論すべき価値があると思います。

しかし、先ほどの記事から判断する範囲では、そうした問題意識は見えません。
「ブランド大学と無名大学の格差は著しく拡大してしまっている」とありますが、それのどこが
まずいのですか?むしろ、金儲けのために大学をつくった側に責任があるのではないですか?
それをやめさせればいいのではないでしょうか?

「地方創生の立場からも必要」とかいう声もありますが、意味が分かりません。。

先ほども述べましたが、現在の首都圏の大学の地元占有率は軒並み80%前後です。
1990年代や2000年代初期には首都圏の大学は、70%前後を地方から来ていた学生で占められていましたが、今は経済的理由から上京せずに地元の国公立大に進学している学生が多いのです。

「地方再生」のため、首都圏の有名私大の定員オーバーを改める?
私には説得力が感じられないのですが・・・。というか何を言ってるのかさっぱり分かりません。

また、地方の「駅弁大学」から文系学部を廃止するという話も確か出ていましたが、それが地方再生に繋がる?支離滅裂ではないでしょうか?

これ、本当の目的は、いわゆる「Fランク大」保護ではないでしょうか??

何のために? まさか、役人の天下り先の経営を保護するため ではないとは思うのですが・・・。

万が一にもそうなら、
こんな方策を一方的に実行する役所に、若者の教育を考える当事者能力があるのか甚だ疑問を感じざるを得ません。

そもそも、「大学を使った金儲け主義」を改めさせたいのであれば
ロクな教育計画もないのに内部留保金をため込んで資産運用にあけくれている大学の財政に
学校会計法を改正してメスを入れるべきではないでしょうか?

大学の質の維持やガバナンスの健全化、お金の使い方の妥当性の検証や具体的な研究・教育ビジョンの構築を促す努力。
そうしたことこそ必要なことだと思います。

それとも、そんなことをしたら天下り先の学校での味わえる「うま味」が減るからやらないということなのでしょうか?まさか、そんなことはないと思うのですが。

定員割れしたら、叩かれ、定員オーバーしたら下に迷惑だからと叩かれ。

私は大学関係者ではありませんが、こんな理不尽に声をあげて反対する大学関係者が
いないのも不思議です。どうしてでしょう?

もしかしたら私の認識不足かもしれませんし、その場合はお詫びして訂正しますが
あまりの理不尽さを感じてしまい、黙っていられませんでした。

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