「筆記もリスニングも満点取れない子は破門」

と言いたいところですが、平均点云々の前に
高得点者が案外少なく、本校レベルの生徒だと
差がつく問題だったようです。
改めて自分の指導力不足を痛感しました。

文科省を中心とした教育改革については
私個人言いたいことはたくさんありますが
一番問題だと思うのは、

「今の生徒に何が出来て、何が出来ないのか」

をしっかりと見極めていないように感じる点です。

「○○が出来なければいけない!」と大人が子どもに言うのは
簡単ですが、子どもの実情も知らずにそれを言っても
虚しい独りよがりなメッセージになるだけ。

まずは子どもの実情を見て、知って、伸ばすことの
難しさも体感して、その上で今後の国の行く末を
考えて長い目で見た教育改革を行うべきだと思います。

前置きが長くなりました。

それでは今年のセンター試験英語で何が出来て、何が出来なかったのか
という視点から問題について話をしていきましょう。
① 発音・アクセント問題
② 文法・語法・語彙問題
③ 会話・不要文指摘・ディスカッション意見要約
④ グラフ読解・広告
⑤ 物語読解
⑥ オペラに関する論説文

①の音声に関する問題は失点が少なかった気がします。

理由としては1994年のセンターや2009年のセンターの時のような
マイナーな音声に関する問題ではなく、比較的満点取りやすかった
問題だったことが挙げられます。
例年、高得点者ほど①での失点が多いので
心配でしたが、高得点者は概ね満点か1問落としといった印象です。

ただ、church / curious / curtain / occur の発音問題を落とした
高得点者が多かったですね。

何故この問題が出来ないのか?

普段から音読量が少ないことももちろん要因の1つとして
挙げられますが、音声を全体として捉えることは出来ても
細かい部分の音声パーツを意識しないで勉強をしていることや
発音も含めた語彙学習が不足しており、発音記号をほとんど
見ないで学習していることが要因だと私は思います。

ただ、この発音問題を落とした生徒の中には
発音が上手な帰国子女もいます。逆に出来た生徒の中にも英語の
音読が下手な生徒もいます。

私は発音問題を出題することの妥当性に疑問を持ちます。

個人的にはやめるべきだと思います。

ある語の一部の音声のみに下線部を引き、それが
他の語の音声と異なるかどうかといったことを聞くことに大きな意味を
見出せません。TOEIC, TOEFL, TEAPなどの試験にはご存知のように
発音問題など存在しません。

こうした問題が出来る生徒の中には(カンでたまたま出来た生徒は除く)

1)類似問題を多くこなして、慣れている。
2)発音記号そのものを含めた音声の体系的な学習をしている。

といった生徒も多いのでしょうが、発音記号を頼りに辞書で英単語の音を
体系的に学習するといった学習をしなくても、手軽に英語の音声に触れることが
出来る時代です。

こうした問題が出来ることがコミュニケーション能力を測定する大きな指標に
なるとも思えません。発音問題が得意でも英語を話すこと自体に大きな壁を
感じる学生は昔からいたわけですから。

いい加減、音声(アクセントはともかく)はSpeaking / Listeningでの
Testにして欲しいですね。発音やアクセントを致命的に間違えると
英語が通じないという経験と切り離して音声に関する知識を問題で聞いても
意味がないのではないでしょうか?
(ただそうするとますます音声学習のモチベーションが下がるのではという危惧はありますが)

② 文法・語法・語義問題

全体的に出来は良かったですね。特に上位者は失点していないですね。

本校ではVintageというAll in one教材を使用しています(学年ごとに異なりますが)。
生徒自身が言っていましたが、その手の教材をやっているのなら落とす問題はないでしょう。

ただ、落とした生徒もいます。では、何を間違えたのか?

6) We have made good progress, so we are already (     ) schedule.
1) ahead of   2) apart from  3) far from  4) out of

恐らく、behind schedule が正解なら、正答率はさらに上がったでしょう。

要するに、「見たことがある問題に近ければ近いほど出来るが、知識をベースに
考えて一つ一つの選択肢が入らない文法的根拠、文脈的根拠を用いて丁寧に
解答する必要がある問題は出来ない」ということだと思います。

逆に他の問題の正答率が高いのは、「見たことがある問題に近い」という
レベルで、文法をきちんと理解して解答しているかどうかは怪しいのかもしれませんね。

普段の小テストから、問題集そのままの問題ではなく、形を変えて出題するなどの
工夫をしてきたつもりですが、残念ながら全員満点とはいきません。
小テストや模試などで間違えても、徹底して復習する
などの学習習慣を徹底させられていない点を私たちは反省しないといけないかもしれませんね。

さて、この分野の問題ですが、TEAPなどでは語彙力・文脈把握力を試す4択問題はあるものの
文法力を試す問題は整序問題、誤文訂正問題を含め一切ありません。

日本の今後の英語教育のためには、出題すべきものなのかどうか?

この点については様々な意見があると思いますが、私は出題すべきという意見です。

もちろん、センター試験のように「見たことがあるものそのままの出題」や
私大の誤文訂正のように(特に早大法・慶應大法)重箱の隅をつつくような問題は
感心しませんが、文法的な理解は英文を組み立てたり、深い読解の土台になると考えるからです。

最近の入試ではグラフ読み取り、広告の情報スキャニングなど
表面的な情報処理の問題が目立ちますが、そうした表面的な情報処理型の問題を
「新しい時代に必要な英語力」としてもてはやす動きもあります。
でも、そんな能力は後でいくらでも、しかも短期で鍛えることが可能なものだし
情報の表面的な処理によって、「考えることをしない」大人が育つのではないでしょうか?

情報社会において必要なのは、大量の情報を処理する能力ではなく
「情報について、その意味を落ち着いて考える能力」だと思います。

今後は、文法の知識を活用するタイプの問題が増えて欲しいものです。
③ 会話・不要文指摘・ディスカッション意見要約

全体的に出来は良かったですが、不要文指摘では29)の問題の出来が意外にも悪かったですね。

「全体のまとまりをよくするために取り除いた方がよい文を選びなさい」

Students in Japan are now engaging more in practical activies and less in memorization
of facts in class. Students are learning scientific principles through actual experience.

1) They do well in science in comparison with other students around the world.
2) They build electric motors using everyday goods, such as wire, magnets, and paper clips.
3) They make ice cream by hand with salt and ice.
4) Students say that they like the new studying style because it is practical as well as

enjoyable and educational.

なんと180点を超えるレベルの生徒の中にも間違えた生徒がいて驚きでした。
また、正解した生徒の中にも相当迷ったという生徒もいて、「何故?」という疑問が沸きました。

ちなみに誤答のほとんどが3)を選んで間違えています。

生徒の言い分を聞いて私なりに整理すると、

「 3)は科学原理を経験によって学ぶ例として適切だと思えない」ということでしょう。

なるほどね(笑)。

カンを蹴っ飛ばしてアイスクリームを作るといった経験がない生徒には

3)は「科学」だとは思えないということなんだ、とやっと間違えた理由が分かりました。

では、1)を不要でないと感じた根拠は何か?

この点は生徒に聞きませんでしたが、恐らく

日本の学生達は実体験を通して科学原理を学んでいる。

⇒ 【ゆえに】 日本人の学生は他国の学生と比較して科学の成績がよい

と読んだのではないかと思います。

言うまでもなく、2) 3)は「科学を体験を通して学ぶ例」であり、1)があると【たとえば】の繋がり
が分断された不自然さが生じるから1)を正解として選ばなければならないのですが、
日本人による説明というのは、教員に限らず、いわゆる「脱線」が多いんですよね。

最近は暗記でなく、実体験を通して科学を学んでるんだよ。

⇒ ま、そんなわけで、日本人学生の科学はレベル高いけどね。

⇒ で、どんな感じで学んでるかなんだけどさ、・・・(以下の例2つ)

と読んだのではないでしょうか?

英語の思考法と日本語の思考法(あるいは記述法)の違いを図形で表した有名なモデルが
ありますが、英語は直線的な記述をします。
その点についての理解が不十分で、勝手な行間の解釈を挟んだことが間違えた理由なのでしょう。

こうした問題が出来なかった生徒には、英語は論理による規制が日本語よりも
強いことを、作文練習などでもっと教えていく必要があると思います。

New Treasure という教科書には Critical Reading/Thinking/Writingのパーツがあり、
中1からの長いタイムスパンで学んでいくことが出来るのですが、
この練習をもっと生徒の間違いや問題点についての分析や材料集めをして
より大量にこなしていく必要があるように感じました。

僭越ですが、New Treasureの例題も、「何のためにやるのか?」が学習者にも教えている教員にも見えないものが多いように感じます。自分なりにそうした例題を開発してみたいと考えています。

さて、この出題には、別の点で問題を感じました。

設問の「取り除いた方がよい」という日本語は「そのままでも別によいけれど」
という可能性を排除していないように思います。

明確に、「取り除かなければ論理がおかしい・不自然になる」と何故言わないのか?

言うべきだと私は思います。

また、「全体のまとまりをよくするために」という曖昧な日本語を使った出題もどうかと
思います。

「その英文はあってもよいではないか?」という指摘があった場合に、逃げるためなのでしょうか?
そうだとすれば、呆れますね。

「最も正しいものを選べ」という日本語にも昔から疑問を持っています。

責任回避という大人の都合を問題に持ち込むなよ、と言いたいですね。
第一、「どういう観点から見て最も正しいのか?」という点が抜けてますよね?
論理力を問う問題が論理的に曖昧なのでは話になりません。
全体的な出来は良かったディスカッションでの意見要約文選択ですが、今年少し変わりましたね。
今までは、

「Aさんは制服着用賛成。Bさんは制服着用反対。Cさんはどちらの立場も考慮した代案」
がパターンでしたが、今年は議論がパターン化されたものでなかったので、予測があまりたてづらく
英文自体をしっかり読まないと自信を持って答えられない問題であったように思います。
④ グラフ読解・広告

高得点者は例年この問題は落とさないものですが、グラフ問題での失点が目立ちました。
180点を超えている生徒でも落としています。

読みやすい英文だと思うのですが、特に最後の「次の段落の話題を予測させる問題」で躓いた生徒が多いですね。

これはセンター試験英語のみならず、私大受験の英語や国語で言えることですが、正答率は本文の難易度だけでなく問題の選択肢の紛らわしさによって変わるということでしょう。

ここではimportの話なのかexportの話なのかを丁寧に区別し選択肢を確実に消去することが必要です。
それをせずに、「フルーツの貿易」と雑に捉えたり、恣意的な深読みをしてしまった生徒が落としたようですね。

⑤ 物語文

比較的出来がよかったと思います。「ええ話やなぁ」と言ってた生徒もいたくらいですから
ちゃんと読めています(笑)。昔のセンターでは物語文で紛らわしい選択肢がいくつかある場合もあり高得点者にとっては、音声問題と並んで落としやすい問題もありましたが、今年の問題は素直で
力のある生徒が落とすといった例は今のところあまり聞こえてきません。

⑥ 論説文:オペラ歌手について

本文はよく読めていたにも関わらず、

48) But what about opera singers?を別の英語表現で書きかえると
どうなるかという問題で落とした生徒が目立ちました。

本文の流れは

Society seems to accept the large salaries paid to business managers and the
multi-million-dollar contracts given to sports athletes. But what about opera singers?

となっています。本文の表現を繰り返すと

Does society accept the large salaries paid to opera singers?

となる訳で、

ビジネスマネージャーや運動選手が高い給料貰うことを社会は容認しているけど
オペラ歌手が貰ったら、社会は受け入れるのか?(あいつらオペラ歌手の癖に
貰いすぎ。そんな価値あるのか?とならないのか?)

と読めたかどうかですね。

ただ読めた生徒でも選択肢の書き換えがひねってあったので、戸惑ったようです。

1) How do opera singers prepare?
2) How should we use opera singers?
3) What are opera singers worth?
4) What sums do opera singers pay?

4)を選んで間違えた生徒が多いようですが、これだとオペラ歌手がお金を払うことになり
おかしい。

1)はオペラ歌手はどうやってprepareするのか?となりprepareの目的語も不明だし意味不明。
2)はオペラ歌手をどう活用するか?ということで文脈に合わない。

消去法で3)を選ぶしかないのですが、

「オペラ歌手は何の価値があるのか?」
「オペラ歌手の価値は何とイコールとなるのか?」

ということなんですが、この解答、本文の流れから言うと素直に対応してないですよね。
間違いとは言えないけど、

社会はオペラ歌手の高給を許容するのか?

という話なわけで、オペラ歌手の価値はいかほどか?

とはズレがあるように思います。

書き換え問題として出題した場合に下線部をWhat are opera singers worth?

と書き換える受験生がどの程度いるのかを考えると何だか釈然とはしませんが
まぁ、他が論外なので問題として成立していないとは言えないのでしょう。

以上、センター英語を、「生徒が何が出来ないのか?」という観点から
ざっくり見てきました。

今後、Input / Output 両方の面から学生の英語力を正確に測定するさらによい試験が
開発されることを望みます。

 

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